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雨の中、1本の傘の中に納まるようにして歩く駿くんとオレ。駿くんは肩がぶつからないようにって、少しだけ俺の後ろを歩きながらオレを守るようにオレの腰に腕を回してる。
久しぶりなのに、駿くんとこんなに密着してても違和感ないのは何でなんだろう。
「そういえばカズのおばさん、最近見ないけど何かあった?」
「あー。なんか、部署が変わったとかで、残業が増えたらしいよ。なかなか定時で帰れな……あっ!」
「なに?」
「オレさ、母親にお使い頼まれてたんだ。なんだっけなー。」
思い出せないー。
なんだっけ。なんかを買って来いって言ってたような気がする…。
「電話してみりゃいいじゃん。」
「そうだね。………ヤベー。スマホないし。」
「マジで?カバンは?」
オレはカバンの中をゴソゴソと探した。
「………ない。」
「部室かもな。ロッカーん中とか。俺がちょっと行って見てくるよ。カズはここで待ってろよ。」
「え。でも、駿くん!」
スグに駆け出そうとした駿くんを止めると、駿くんはふっと笑ってオレの腰をさすった。
「カズ、今日は腰がヤバイんだろ?」
「え。なんでわかるの?」
「そんなの。わかるに決まってんだろ。…ま、ここだとなんだから、あそこの屋根の下にいろよ。30分たっても俺が帰って来なかったら、先に家に帰ってていいからな。」
そう言って、雨の中を行こうとする駿くんに、急いで声を掛ける。
「駿くん!傘!」
「いい!走るのに邪魔だから。カズが使って!じゃな!」
そのまま、駿くんはまた、
走って学校の方へ戻って行った。
ここまで来るのに歩いて15分。
往復で30分だけど、走って行ったから
オレのスマホを探し出す時間を足したとしても、最低40分はかかるとする。
なのに、1時間待っても
駿くんはここには来なかった。
駿くんの足なら、とっくに来てもいいはずなのに。遅いな。
本当はオレが行くべきだったのに。
行っみようか。
学校に。
でも、もし行き違いになったら?
いや、今学校から来た道を行けば
どこかで絶対に会えるはず。
でも、もし途中で駿くんにもしもの事があったら…どうしよう。
一気に不安になり、オレはそこから学校まで一気に走って帰った。
でも冷たい雨に打たれたからか、よけいに腰が痛い。はやる気持ちは更に胸を苦しめ、なんとか早歩きで学校まで行った。
校門まで来ても
途中で、駿くんには会えなかった。
まさか、どっかですれ違った?
ニアミスとか?
こんな時、スマホがあれば…
駿くん、何かに巻き込まれてないよね?
真っ暗になった校庭を横切る。多分駿くんは脱衣室に向かってるはずだから。
ビチャビチャの靴が、校庭の砂でもっとぐちゃぐちゃになった。それでも構わない。
脱衣室のドアをガチャガチャするが
鍵が掛かっていた。
…駿くん…ここまで来てないのかな?
どこに行ったんだろう。
ここに来る前に交差点とかで誰かが事故ったような形跡は無かったし。まあ、駿くんが誰かに連れ去られるなんてこともないとは思うんだけど…
色んないらない事が頭に浮かんでは消え、
オレの心はどんどん不安になる。
「駿くん…どこに行ったの…」
誰も聞いていない
雨の夜空に向かって呟いた。
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