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光は、俺が来た時にはもう既にここにいた。
いったいどれくらいの間ここにひとりぼっちだったんだろう。おしゃべりが好きで、いつも笑顔で優しい光がこの地下にひとりでいる姿を想像できない。いや、したくないのかもしれない。
俺たちは支え合って生きているけど、お互いのことを何も知らない。ここに来た理由とか、背負うものだとか、日々の生活や笑顔の裏に隠したものを何も知らないのだ。
暗黙の了解とでもいうのだろうか。俺たちはお互いに心地よい距離を理解していた。そしてその距離が崩れた時の怖さも知っている。心地良い関係を壊される恐怖を知っている俺たちだからこそ、今こうして上手くバランスを取れているのかもしれない。
「あっきー遅いねぇ…」
「そろそろ来るよ。晃が熱心に残業なんてありえないし」
「残業…確かにそうだねっ」
くすくすと笑う光は本当に可愛い。いつまでも小さな子どものように屈託のない笑顔。そんな光がどうしてこんな目に合わなきゃいけないんだろう。
どうして、俺たちは。
そしてまた堂々巡り。きっと考えても意味のないことなんだ。俺たちはただの“売り物”なんだから、いくら答えなんて出ない。
「あっ、帰ってきた!」
「え?」
「ほら、足音がするでしょう?」
言われた通りに耳をすましてみると、たしかに遠くで階段を降りてくる足音がした。これにすぐ気付くなんて光はどんだけ耳がいいんだろう。
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