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今まで、あんなに優しく笑ってくれた光はどこにいってしまったのだろう。
光の発する言葉が心の中の柔らかい部分に突き刺さり、抉るように切り裂いていく。
「そんな、俺…」
光も晃も大切な仲間で、この異常な空間を共にする新しい家族だと思っていた。今回だってせっかく解放されるのなら自分だけではなく、大切な光も一緒に連れ出したいと思った。
嘘とか偽善とかそんなものじゃない。これは、俺が心から望んだ願いだった。
「良かったじゃん。これからもその旦那様に抱かれ続けるわけでしょ?嫌々この仕事やってた僕にはそんなの無理」
「違う…っ!俺だって、嫌々…」
「さっきからなに言ってるの?別にユキがどう思っていようと僕には関係ないよ。ユキと僕は、もう違う世界の人間なんだから」
どうして、なんで。
「じゃあ僕は荷物まとめてくるね。旦那様が待ってるならユキも早く準備したほうがいいんじゃない?」
そう言い残し、光はこの部屋を後にした。
パタンと扉が閉まる音。光が出て行った部屋に残ったものは、息をするのも苦しいほどに刺々しい空気とやり場のない胸の痛み。
どうして?俺はどこで間違った?
静かな部屋で俯きながら自問を繰り返しても答えは出ない。ひとりだけの部屋では誰の声も聞こえない。
どれくらいの時間そうしていたのかはわからないけれど、光が階段を上っていく音と車が発進する音だけがやたらと大きく耳に届いた。
車のエンジン音が遠ざかった後も、放心状態の俺はしばらくこの場から動けずに立ち尽くしていた。
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