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落とすわけにはいかないピンポン球は、震えがくるほど恐ろしく見える。
卓球台も、広く見えた。
見えるけど、見えるけど!
負けんな、おれ。
絶対に、山野さんの隣でしか笑えない。
松島さんの隣では、涙しか出てこないと思う。
おれが好きなのは、山野さんなのだから。
往復するピンポン球。
弾ける音と、風を切る音。
手のひらの汗は、グリップを握るおれの手を狂わせる。
でも、それは松島さんも同じだ。
おれの陣地で跳ねた球は、左のサイドライン脇に落ちそうになった。
必死で腕を伸ばしてラケットに当てていく。
卓球台の角に、何回ぶつけたか分からない腰骨。
下腹部も、伸び上がった拍子に擦り付けていく。
痛いはずなのに、痛くない。
感覚は、球しか追っていない。
目も、手も、足も、球を追うことだけに集中している。
松島さんが振りかぶったラケットに、球が吸い込まれた。
左のサイドラインから起き上がったおれの目の前で、右のサイドラインへ向かって落ちていく。
・・・ヤバイ!!
会場が息を飲むのが分かった。
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