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翌朝、会社に出勤した。
中山課長がストーカーでないことが分かって、気持ちがかなり楽になった。
昨日は遅くまで、みんな親身になって相談に乗ってくれた事で、今までの恐怖が和らいだこともあるんだと思う。
自宅に届く郵便物は、山野さんの家に転送することにした。
転送不要の重要な郵便物は、いまのところ届く予定はない。
だから、犯人に郵便を狙われる心配は無かった。
思いつく限りの店舗やいろんな契約は、ネットで変更可能なかぎり変更しまくった。
このストーキングが解決するまで、基本的にはもう自分の借りた部屋には帰らないつもりだ。
「おはようございます。」
「甲斐さん、おはようございます。」
寺田さんがすでに出勤していて、秘密を共有した仲間としての親密な感じに、また気持ちが楽になった。
「おはようございます。」
「課長、おはようございます。」
中山課長の出勤に、寺田さんが慌てて頭を下げた。
居酒屋を出た後、ふたりがどうなったのかは分からないけど、課長は笑顔だ。
対して寺田さんは、ちょっとモジモジしている。
あー・・・。
これ、見ちゃいけないやつかな。
そう思いながら、鞄からボイスレコーダーを取り出して机に置いた。
ロッカーに置いてこよ。
鞄を閉じて、おれはロッカーへ向かった。
今日はあちこち回らないと。
提案書の最終確認して、それからあそこの病院行って、それからあそこでしょ。
あと、見積提出したところにアプローチして。
「あ、おはようございます。」
「甲斐くん、新製品の契約取れたんだって?」
「富永さんこそ駅前の眼科、フルセットで買い替えって聞きましたよ。」
寺田さんが言う、字が似ているという富永さんと笑顔で話をした。
うん、やっぱり富永さんじゃ無さそうだよね。
「やけっぱちで提案書を持って行った瞬間に、今の器材の障害が起きたんだよ。ラッキーだったな。」
「へぇ。でもやけっぱちって何ですか?」
聞くと富永さんが表情を曇らせた。
「彼女と別れたんだ。俺の気持ちがちょっと他の人に向いてしまって。」
え!!
「い、いつですか?!」
「最近。いま、新たにアプローチ中。」
うがっ!!
それって、オレトイウコトデハ ナイデスヨネ?
「そ、そうなんですね。」
ドキドキしてきた。
アプローチって、写真とか薔薇とかじゃないよね?!
「やっぱ、花って貰ったら嬉しいもんかね?」
「さささささささ、さあ?」
こ、怖い。
どうしよう。
「あれ、甲斐くん虫に刺されてるじゃん。」
「虫?!」
ムシって、山野サンノコトデハ、ナイデスヨネ?
「気をつけろよ、デング熱とか流行ったんだから。」
「そ、ソウデスネ。」
後ろ歩きでゆっくりと富永さんから離れていく。
「甲斐くん、どうした?」
「あ、あの、お茶買ってきます!」
バタバタとその場を離れた。
超、怖かった。
もし富永さんなら、距離を取るようにしなくっちゃ。
一階の自販機に小銭を投入しながら、おれはなるべく社内では寺田さんや課長の側にいようと思った。
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