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変化
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「美郷」
平良さんの優しい声が上から降ってきて目を開ける
あれから1週間が経ち、平良さんは毎朝僕を起こしに来てくれるし、呼び捨てで呼んでくれるようになったし、前よりも沢山話しかけてくれるし、
チュッ
僕がなかなか起きられなくてモゾモゾしていると、額にキスを落としてくれるようになった
むしろそれを望んで起きない節があるのだけど、それは平良さんには内緒
僕、こんなに幸せでいいのかな
って思えるくらいとっても幸せ
心の奥底に閉じ込めて凍らせた筈の恋心がムクムクと育ち、今では勝手に殻を破って外に出てきてしまおうとする
そもそも平良さんは女の子を好きだろうし、僕には鷹さんという恋人がいるわけだし、禁断も禁断な恋なのだから、僕としてはもうこの心を忘れたいんだけど、毎朝の起床時からドキドキさせられて忘れさせてはくれなかった
それでも、僕はとっても幸せで
だからこそ不安で
だけど、前みたいに自傷はしないようになった
悲しそうな顔で平良さんに頼まれてしまったんだ
自分を大切にしてあげて、って
鷹さんのようなことを言うんだな、って思ったけど、2人が言うのならきっと本心で、誰もが思うことなんだろう、と思った
だから僕はその頼みをきかなくちゃいけないし、もし破ったらきっと失望されてしまうから、僕は忠実にその頼みに従った
それと、もう1つ変わったことがある
それは、鷹さんとの関係
明らかに僕に対する反応が冷たくなっている
もう、僕に興味を無くしたのかな?
それならそれで、嬉しいような、悲しいような・・・
色んな感情が渦巻いて、やっぱり僕は少しは鷹さんのこと"好き"なんだろうな、と思う
それとも、僕が幸せそうにしているのが駄目なのかな
僕は、鷹さんが苦しむ僕に欲情しているのはなんとなく気づいていた
だから、僕が幸せそうにしたらきっと鷹さんは面白くないんだろうな
生まれて初めて手にした幸せを簡単には手放したくなくて、でも鷹さんに嫌われるのが怖くて、僕の心はぐちゃぐちゃだった
こんなに悩むくらいだったら、あの頃のまま、心無いまま僕を虐め抜いて欲しかった
そしたらこんな感情知らなくてよかったのに
「美郷・・・?そろそろ起きて?」
平良さんがなかなか起きない僕を不審に思ったのか声を掛けてくる
まだ傍にいてくれた事実に心が温かくなって、何故か泣きそうになるのを必死に抑えた
『ごめんなさい・・・』
何も考えてなかったかのように振舞って、平良さんに渡された服を手にして着替えを済ませる
「・・・昨日も眠れなかったの?」
『ううん、ちゃんと毎日寝れてるよ』
「そう・・・?それならいいんだけど・・・」
嘘。
最近毎日同じようなことを考えて、悩んで、なかなか寝付けない
だけど、迷惑を掛けたくなくて、心配させたくなくて僕は平気で嘘をつく
あぁ、悪い子だな、僕は
友達のように平良さんと接するようになってから、妙に平良さんは勘が良いことを知った
だから、悟られまいとするのが少し大変
平良さんの後ろに続いて部屋を出て、食事へと向かう
長くて白いいつもの机の上には朝食が綺麗に並んでいて、朝から平良さんが働いている姿が目に浮かぶ
そして、そこに座っている鷹さんと目が合う
と同時に背筋に悪寒が走った
久しぶりに見る、心のない真っ黒な目だった
これは、まずいかもしれない、と咄嗟に思ったけど、思ったところでどうにかできるわけでもなく・・・
今日もあまり会話を交わさない3人での食事を済ませ、部屋に戻ろうとした時だった
「美郷、この後俺の部屋に来い。」
温度を持たない鷹さんの声が後ろから聞こえてしまった
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