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旅立ち2
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「いらっしゃい、俺の家へようこそ」
平良さんの運転する車が丁寧に駐車されて僕が地面に降りた瞬間降ってくる声
顔を上げると、とびきり優しい顔で手を差し伸べてくれている平良さんと目が合った
『お、お邪魔します』
エスコートされるがままに家に入っていく
全然豪邸じゃないし、普通の家のはずだけど僕にはこの家がとびきり輝いているように見えた
「ふふっ、そんなに緊張しないでよ。俺まで力が入ってきちゃった」
『えへへ、ごめんなさい・・・なんだか、夢みたいで』
「・・・そうだろうね。他人の家に上がる経験なんてそんなにないだろうから」
「もしかして、不安・・・だったりする?」
『え?』
心配そうに顔を覗き込まれて思わず呆けたような声をだしてしまう
どうしてそんなこと訊くんだろう
「いや、大丈夫ならいいんだよ。だけど・・・酷いこともあったって聞いてるから」
『あぁ・・・』
なんだ、そういうことか
鷹さんから聞いちゃったんだ、あの時のこと
『大丈夫だよ、だって平良さんのこと信用してるもん』
「・・・・・・!」
平良さんは知らないだろうけど、僕はね、平良さんのことがとびっきり好きだから
だから今は不安も大きいけど、楽しみな気持ちだって大きいんだよ
そんな気持ちを込めて平良さんを見ると、驚いたように目を開いたあと嬉しそうに笑ってくれた
「美郷は本当にかわいいね・・・可愛すぎてハグしちゃう」
『あは、ハグされちゃった!』
宣言通りハグをされて2人でクスクスと笑い合う
こんな穏やかな時間を過ごせる時が来るなんて思ってなかったなぁ
鷹さんと離ればなれになるのは寂しいけれど、これも1つの親離れだと思ったら受け入れられそう
だってこんなに幸せだ
平良さんとの生活は驚くほど順風満帆に進んでいった
本でしか読んだことのない日常に少しずつ溶け込んでいる自分がいることがすごく嬉しい
随分前に真っ白になってしまった自分の髪の毛には今は平良さんの趣味で水色が入っている
すごく綺麗に染まってくれて僕も嬉しかった
実は毎日鏡を見るのが楽しかったりする
そうやって日々を過ごして約1ヶ月
今日は僕たちは寄り添って平良さんのスマホの画面を一緒に見ていた
見ているのは昔の写真たち
長めの髪をハーフアップにしている平良さんの写真が出てきて、僕が見せて欲しいとせがんだからだ
『わぁ、この平良さんも超かっこいい・・・』
「う〜ん照れるなぁ・・・お、これ動画あるじゃん、見る?」
『見たい!』
「あはは、いいよ」
平良さんの綺麗な指が再生マークを押す
綺麗な海で笑い合う綺麗な男女
片方は平良さん、もう片方は・・・?
「懐かしいなぁ、これ。・・・こっちの女の人がね、亡くなった俺の姉さんだよ」
『平良さんの、お姉さん・・・』
ふっと優しく微笑んで平良さんはスマホの画面を見つめる
その横顔は少しだけ寂しそうだった
«姉さん!あんまりはしゃいで転ばないでよ!»
«あはは!分かってるって!»
スマホから聞こえてくる楽しそうな声
その声を聞いた瞬間、ピシリと体が固まった
あれ、この声、どこかで・・・
ゆっくりと動いていた脳みそをこれでもかと働かせて記憶を遡る
そして、たどり着いた
«ねぇ、生きたい?»
«そう・・・。頑張るのよ。負けないで。応援、してるから»
そう優しく僕に語りかけてくれた女の人の声と全く一緒だった
あの日・・・鷹さんに首をキツく絞められて死にかけたあの夢の中で僕に再生を促してくれた女の人の声だ
でも、どうしてそれが平良さんのお姉さん?
心臓がやけに煩く音を立て始める
なんともいえない嫌な予感が僕の胸を取り巻いていった
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