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にじゅうなな
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「お、類じゃん。お久ー」
教室に帰ると、必ずと言っていいほど海斗が声をかけてくれる。
それが嬉しい。
「うん」
次の授業は、美術。移動か。
「海斗、移動しよう」
「おー…雅也!行こーぜ」
え。
見ないように、と避けていた。
そっか、今日は来てたのか。
「あー…ごめん海斗、先行っててくんね?」
俺をちらりと見ながらそう言う雅也。
きっと、何か言いたいことがあるんだろう、俺に。
あれかな、相沢さんと別れたことかな。
もっと大事にしろよって怒られんのかな。
大事に出来なかったのは雅也のせいなのに。
…いや、自分のせい、か。
==
雅也といつぶりか、隣を歩いている。
だけどその間に流れるのは沈黙だけ。
もう、美術室のある1階に着こうとしていた時やっと隣から声が聞こえた。
「類」
俺の名前を呼ぶその声が、とても懐かしくて、いつの間にそんなに距離ができていたんだろうと少し悲しくなる。
「…なに」
「俺、わかんねぇんだよ」
「なにが」
「確かに類は昔から塩対応だったけど、最近まではそこに愛があった。なのに最近の類の言葉は棘しかない。なぁ俺なんかしたか?」
"愛"なんて、そんな大層なものじゃない。
ただ醜い嫉妬の塊だよ。
「…雅也は何も悪くない、ただ……悔しかった」
そう、悔しくて、悲しくて、苦しかった。
「え、何が?」
本当に分かってないようで、考え込むように手を顎に当てた雅也を見て、安心したのと同時にそれ程までに俺は対象外だったのだとまた心が汚くなっていく。
「お前を、取られたことが」
あぁ、もう言ってしまおうか。全て。
それで嫌われたって雅也には慰めてくれる彼女が居るのだ。
なんて…狡い。
「取られた、って…」
「ここまで言ってわかんない?…お前を彼女に取られたのが悔しかったんだよ…」
ここまで言ってしまったら告白したも同然。
あぁその証拠にほら。
固まって何も言えなくなってる。
…でも、でもな。
俺、雅也にそんな顔させたくないんだよ。
だから、偽ってあげる。嘘をつき続けてあげる。
これで君は安心するでしょ?
「…なんて、な。何、雅也もしかして俺が告白したとでも思ってんの」
「ッはあ?!んだよそれ!俺、今どうしようってめっちゃ考えて…!」
考えたところで答えなんて決まってるのに。
どうせ、ごめん、ってそう言うだけなんでしょ。
「雅也とか有り得ねぇ。この頃、機嫌悪かったのはただホルモンが乱れてただけだってよ、病院行ってきて言われた」
「…なんだ、そっか…良かった安心したぁ」
「ほら、授業遅れんぞ」
「おう!」
授業が始まって、ただぼーっと絵を描く。
今日は下書きをするだけで、余った時間に記憶の中の雅也を引っ張り出して、これで最後だからと想いを込めて描いたそれは、
下手くそで、全然似てなくて、でもどんな場面を描こうとしても雅也は絶対笑ってて。
そんなとこが本当に…。
先生、すいません、と心の中で謝りながら下書きの紙の端っこを破りただ書き綴った。
それはラブレターと呼ぶには雑で、だけど確かに愛を語ったもので。
好きなとこ、嫌いなとこ、普通の日常、色んなこと書いて、
最後、最後なんだから、と
《大好きでした》
…そう書いたあと、丸めて捨てた。
叶うならゴミ箱の中ででも生き続けて欲しいと。
そう、願いながら。
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