アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
悪魔の純愛
-
*
「なっ」
目を丸くし、驚愕の表情を浮かべるK。自分の策が功を奏すると絶対的な自信があったのだろう。その寸分の狂いも無いと盲信した計画が、彼の覚醒というあっけない障壁によって見事に崩れ去ってしまったのだ。それにしても絶体絶命。
「ようこそ私の支配下へ。多忙な中こうやってご足労いただけたこと、恐悦至極。君なら絶対に来てくれると思っていたよ」
Kの耳には彼の言葉は届いていないようだった。そんな賛辞を並べ、そこに不快と批判を込めているのかもしれない。
「――…………っ」
言葉にならない、声帯の震えを発し、Kは彼の腕を振りほどこうとする。現在、相対すべきではない最たる相手と、最悪の形で出会ってしまったのだからそうするのが当然であって、やはりKはいくら一般教養が無いからとは言え、本能で危険は知っているようだ。
ではその逃走という思い込みを払拭してやらねばならない。この時、彼の方も駆け引きをせねばならなかった。
両者がそれぞれの想いを乗せて猪突猛進しては事故にしかならない。各々の目的を精査してみれば合致する箇所があるのだ。高校数学で習った、集合の要素を且つで表現していた部分。K且つ彼がここにはある。
しかし、いくら理論整然と心を整理した所で人間の心はそう白黒つけられないのである。各状況に則した行動データを平均化して、イフゼンルールを造り出すことは可能であろうし、それが平均なのであれば、そこそこの結果をたたき出すこともするだろう。
だが、今の状況は作成された試験問題ではなく、成り行きで発生した問題であって、二人の問題であって、当人の問題であるのだ。
それならば解答も正解もどこにもない。社会なんて、恋愛なんて、そんなもの。相手の学歴、見てくれ、年収、趣味、家族構成、云々の一体どこをどう切り取れば魅力的だというのか。もしそんな軸があるのであれば、生まれた時点でそのレールをはっきりと教育すべきだろうし、それがやはり敷かれていないのであればそんな群衆が叩き出した、安心と魅力に紛れた怠惰に寄り添う必要もないのであろう。
だから彼はKに惹かれた。自分の興味と関心と好奇と求知で勝手気ままに進んでいくKの姿が眩しかった。
そしてその破滅さもまた表現し難い悪の魅力を与えていたのだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 14