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噛み千切られた意識
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ビーッと鳴り響いたインターフォンの音に、僕の肩がびくりと揺れた。
そっとモニターに近づき、画面を覗く。
そこに映ったのは、政府上層部の秘書、蒔庫(じくら)だった。
応えるべきか迷っている僕に、インターフォンのカメラを覗く時庫は、画面越しにすら伝わる焦燥感を纏っていた。
困ったようにそわそわとしている時庫の姿に、僕は思わず通話ボタンを押下する。
「鳳茉さん、居ますよねぇ? 尾憑さんが出掛けているコトは知ってます。急ぎの書類があったので、お伺いしました」
回線が繋がったと察した時庫が、矢継ぎ早に言葉を紡いだ。
「預かれば、いいんですか…?」
迷いの混じる声色で、言葉を返した。
僕の声に時庫は、ほっと胸を撫で下ろす。
「居たんですね、よかった。…直接渡したいので、中で待たせてもらえませんか?」
眉尻を下げ、あからさまな困り顔を見せる時庫に、僕は迷う。
カメラから視線を外した時庫は、大袈裟に頭をガシガシと掻き乱し、心底不満そうな声を上げた。
「ダメなら、いいです。ここで待ちます……」
不服そうに顔を歪めた時庫は、画角から外れた。
たぶん、門に背を預け、不貞腐れて座り込んでいる。
なんだか凄く意地の悪いコトをしている気がしてしまう。
「いま、開けます」
罪悪感に見舞われた僕は、門の鍵を開けた。
「ありがとうございますっ」
現金な声を放った時庫は、開いた門からそのまま家の中へと入ってきた。
時庫をリビングへと通し、ソファーへと座らせる。
「何か、飲みますか?」
早めに帰るとは言ったが、尾憑が出掛けてから、まだ30分も経っていない。
往復するだけでも、1時間はかかる。
尾憑は、まだしばらく戻らない。
聞こえない程度の小さな溜め息を吐き、飲み物を用意するために、キッチンへと足を向けた。
「……っ!」
音もなく立ち上がった時庫が、後ろから僕の口許に何かを押し付けた。
慌てて振り払ったが、押し付けられた布に染み込んでいた液体を吸い込んだ後だった。
「ぅ、あ………」
身体中を熱せられた血液が、走り抜けた。
腰から痺れた感覚が、背を駆け上がる。
ぞわっとした震えが、背から頸を震わせる。
ぐらりと揺れた視界に、僕はその場に座り込む。
険しくなる顔のまま、時庫を睨みつけた。
にたりといやらしく笑った時庫は、舌舐めずる。
「発情したΩをどうしようと、オレの勝手。前から狙ってたんだよね」
真っ黒に染まった笑顔のままに、手にしている布切れを再び、僕の口許へと伸ばす。
熱く滾る血液に翻弄されながら、僕は必死にその手を振り払う。
時庫が掴んでいた布は弾き飛び、ソファーの下へと滑っていった。
ソファーの下に隠れた布を瞳で追った時庫は、ふっと息を吐き、荒い呼吸を繰り返し、座り込む僕に馬乗りになる。
「諦めな……」
くつくつと笑った時庫に顎を捕まれ、荒く唇が合わされた。
ぶわりと沸き上がる時庫のαのフェロモンが、僕を煽る。
Ωの本能が、脳内を掻き乱す。
荒れ狂う本能が、失いたくない理性を飲み込み、意識を噛み千切る。
―― ぷつん……
まるで電源を切られたテレビのように、目の前が暗闇に飲み込まれた。
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