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第三話「推しが好き過ぎてつらい」⑤
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オメガである俺にとって、番は唯一無二の存在。一度噛まれてしまえば、もう他の誰かと番うことはできず、きびちゃんにしか発情しなくなる。
逆にアルファであるきびちゃんは、俺と番になっても他の人とセックスでも何でも出来てしまう。
少女漫画の王子様のようにモテるきびちゃんに、一般庶民の俺はいつ捨てられたっておかしくない。そう考えていただけに、きびちゃんの口から『番になる?』なんて言葉が出たことに驚きを隠せなかった。
「嫌ならいいけど」
「嫌じゃないッ! 嫌じゃない、けど……俺、いま発情期じゃないし……」
それに怖い。
今でもこんなにきびちゃんが好きなのに、番になんてなったらどうなってしまうんだろう。嫉妬で死にそうだし、捨てられたらって不安でおかしくなってしまうかもしれない。
「ふっ、気付いてない?」
眉尻を下げ情けなく唇を震わせていると、上からきびちゃんの笑う声が聞こえた。
「………?」
言葉の意味がわからなくて、キョトンと首を傾げる。
「ヒート始まってるよ」
「え?」
言われた瞬間、突然自覚するように心臓が暴れ出す。ぶあっとお腹から全身に広がる発情期特有の熱を感じて目を見開いた。
それに性器を抜かれてから時間が経っているのに、身体の熱が引いていない。
ボタボタと後孔から伝い落ちていくのは、きびちゃんに出されたものだけだと思っていた。でも違う。よく見ると精液だけでなく、粘度の高い愛液も混ざっていた。
自覚した途端グラグラと揺れ出す視界に、身体から力が抜けていく。
「平気? 立ってるのキツい?」
背中を手で押され、きびちゃんの胸に倒れるようにもたれかかった。
「はあ、はぁッ……」
バクバクと早くなる心臓に、一生懸命息を吐き出す。きびちゃんが一緒にいてくれていなかったら、たぶんパニックになっていた。何度経験してもこの発情期の感覚には慣れない。
「やっぱりヒート前は情緒不安定になるね」
ギュッと抱きしめながら言われ、ぐったりと目を閉じた。
確かに、ヒート前はいつも『フられるかも』って不安になってる気がする。普段からきびちゃんのモテっぷりに嫉妬することはあったけど、それでもそれを本人にぶつけたりはしなかった。
推し相手にそんなこと、おこがましい。
「おいで」
きびちゃんに抱き上げられ、寝室へと運んでもらった。
「身体拭こうか」
俺をベッドにそっと下ろすと、きびちゃんはお湯で濡らしたタオルを持ってきてくれた。簡単に全身を清め、火照ってだるい身体をシーツの上に投げ出す。
「はぁ……きびちゃん………」
さっきあれだけシたというのに、本格的に発情してしまったようで、お腹の中が疼いて仕方ない。ベッドに腰かけたきびちゃんをトロンとした目で見上げると、よしよしと頭を撫でられた。
「もうちょっと休憩したらシようね」
そう言って笑ってくれるきびちゃんに胸が痛くなる。堪らない気持ちになって、寝転がったまま座っているきびちゃんに擦り寄り、腰に顔をうずめた。
「ふ…ン……」
スンスンと匂いを嗅ぐと、大好きなきびちゃんの匂いがして、お腹の中がキュンキュンする。時々意地悪もされるけど、やっぱり優しくてカッコよくて、きびちゃんが大好きだ。
「……番になったらさ」
不意に、ポツリと呟くような声が聞こえた。腰から少しだけ顔を離して、きびちゃんの顔を見上げる。
「ちょっとは安心してくれる?」
「え……」
見下ろしてくる顔は、少し困っているような感じだった。視線をさまよわせ、返事を探す。
「たぶん……無理」
「え」
俺の言葉に、きびちゃんは戸惑ったような声を上げた。
「きびちゃんモテるから、俺のことなんかいつでも捨てられるじゃん………」
ボソボソといつもは言わない本音を拗ねたように言うと、珍しくきびちゃんは驚いた顔をした。
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