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ビビンバ
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何を口走っているのか、自分でもよくわからなかったが、とにかく俺は今日、自分からの提案で、ルカの家に泊まる。
以前は何も思わなかった。なぜなら、俺にとってルカは、ただの友達だったから。でも今は、ルカの懸想相手に嫉妬する自分を発見してしまった。そんな俺が、ルカと二人きりになってしまう選択をした。
自分でも、かなり衝動的だな、と思う。
しかも、泊りの用意もしていなくて、ほとんど滅茶苦茶だな、と思う。
それでもルカは快くOKしてくれた。それを見る限り、ほっとしつつも、やっぱり友達としか見られていないのだな、と思う。
大学近くでのバイトを終え、ルカへ連絡をしたら、駅前の喫茶店にいた。
迎えに行くと、ルカは俺を見つけて店から出てきた。
「こんな遅くまでバイトしてるの?」
「そうだよ。」
二人きりになったのと、バイトで他人とたくさん喋ってリハビリが出来たのか、俺はわりとまともに喋れた。
「いつもはこのあと小説書いてるの?」
「ああ。自由な時間、なるだけ減らしてるんだ、時間があったところで悩むだけだから。」
「そっか。頑張ってるんだね。」
ルカの笑顔を見て、なんだか照れくさかった。
「まあな。・・・この後、どうする?」
「ご飯用意してあるから、うちで食べよう。」
ルカに引っ張られて付いていくと、ぼろいマンションに着いた。
「ここ、ルカんち?」
と俺が聞くと、
「そう。」とルカは階段を昇っていく。
一人暮らししているルカは、経済的にそこまで余裕がないのだろう。でも、通された家の中は、男一人所帯の割りに小奇麗にしてあった。
リビングに座らされて、俺はお茶を出されていた。
「ハルの小説の感想、言っていい?」
ルカは、以前俺が没にした小説の原稿を広げる。
「変なとことか、指摘して欲しい。」
俺が言うと、
「じゃあ、早速だけど・・・。まず、発想自体は結構面白かった。ただ、なんか書き方に焦りがあって、早く結末に持ってこうとしてるっていうか・・・そこが読みづらかったかなぁ。・・・・」
と言う具合に、小一時間、ルカは俺の小説の良いところと悪いところを説明してくれた。俺は全部頭に叩き込んだ。
ルカの説明はわかりやすくて、俺は自分の作品の幼稚さや粗雑さをありありと気付かされ、かなり恥ずかしかった。でも、文芸部として作品を見せ合っていた頃に戻ったような気もして、嬉しかった。
ひとしきり講評が終わり、俺は脳みそに快い疲れを感じた。
ルカもちょっと疲れたらしく、
「久々にこんな頭使ったー」と言いながら、カーペットに倒れ込んだ。
「・・・ありがとう。俺、もうちょっと考えて小説書きたい。」
「うん、頑張れ。」
ルカはカーペットを這いずって、そのまま、俺の胡坐をかいたところへ頭を乗せてきた。
「疲れたのでよしよししてください。」
ルカの突然の甘え方に俺はちょっと驚いたが、そのまま頭を撫でてやった。
「よしよし。」
ふわふわと柔らかい猫っ毛に触れて、改めて、ルカの頭が膝に乗っていると実感した。瞬間、体温が2度くらい上がる。ルカにばれたくなくて、
「甘えタイムおしまい。」と言って、無理やりにルカの体を起こした。
「ありがとーございました」と言って、ルカは台所に行く。
「夕飯作っちゃうね。」
さっきから、友達同士の雰囲気と、妙な感じになりそうな雰囲気を、俺の心は行ったり来たりしている。ルカとどうなりたいんだ、俺は。
好きになっているなら、ちゃんとしたかった。ちゃんと告白して、将来のこととかも考えたい。でも、考えれば考えるほど混乱してくるのだ。
男同士で、そんなことになって良いのか。そもそも、ルカはどう思ってるんだろう。好きな子がいると言いながら、俺に対してなんであんなに甘えてくるのだろうか。どうして良いのかわからない。
とりあえず、アレだ、ルカに、この前の相談の続きを振ろう。そこをちゃんとしないと始まらない。
「お待たせ~」とルカがビビンバ丼を持ってきた。ご飯の上にちゃんと作ったらしき具が載っていて、俺は自炊しているルカを素直にすごいと思った。
「具、作ったの?」
「休みの日に作り置きしてるんだよ。炊飯器買ったらご飯も炊きたいけど、今は、冷凍ご飯。」
そうだ、飲むでしょ、とルカは缶ビールを出してくる。
「飲む。」明日は俺も休みだ。
俺は、早速ルカの恋愛話へ話題を持っていった。傷付くかもしれないけれど、ルカのことが知りたかった。
「全然進展ないよ。」と、ルカは言った。
「何だろう、好かれてるとは思う、けど。」
「どんな人なの?」俺はさりげないふりをして聞いてみる。ビールが苦いのは、多分俺の味覚が子供なせいだけではないはずだ。
「えー・・・っと、真面目で、ひたむきな人。」
「そもそもどこで知り合ったんだよ。」どうして教えてくれなかったの、と言う気持ちを裏に込めて、ルカをこころもち睨む格好になってしまう。
「まぁ、色々あったんだよ。」ぼやかすような言いざまに、俺は自分の知らないルカを見た気持ちになってしまう。
酒が進むにつれ、俺はルカが何か本音を言わないかと思った。だが結局、俺のほうがやや本音を漏らしてしまった。
「俺、ルカに恋人が出来たらきっと寂しい。なんか知らないけど、最近そんなことばっかり考えてる。」
そういったら、ルカが変な反応をした。なんていうか、今まで見たことのない反応だった。そして、むせた。飲んでいたビールが喉につかえたらしかった。
そして、次の瞬間ルカの顔から表情が消えた。真顔でこっちを見てくるルカ。俺は、背筋がヒヤッとした。怖い。え?何考えてるんだ。
「ハル、どうして僕の好きな人、そんなに知りたがるの?」
ルカの目は、まっすぐに俺を見ていた。だめだ、取り繕っても、多分ばれてしまう。俺は、ほとんど操られるみたいにして、口を開いた。
「俺の方がその人より、ルカを好きだから。」
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