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ボクが語る彼も、緑間くんが語る彼も、過去形になった。
学校の帰り道。高尾くんにお線香あげさせてほしいと緑間くんに電話したら、学校まで迎えにきてくれた。
「キミはお葬式には出たんですか?」
「ああ」
ということは、高尾くんの死に顔を見たのか。
緑間くんの電話で、言葉の端々からしから推測したことだけど、高尾くんはひき逃げをされて見るも無残な姿だったらしい。
「……緑間くん、泣いたんですね」
「泣いた訳ではない。生理現象なのだよ」
こんな時までつんを発揮しなくてもいいのに。彼は知られていない、と思っているのだろう。自分が試合に負けるたびに泣いているということを。
高尾は優しいやつだった。オレは何度も助けられたのだよ。なんで、それを伝えられなかったのだろう。ひとことでいいから、ありがとうと言いたかった。
横を歩く彼の顔を見上げると、彼は困ったように笑っていた。
「伝わっていたとは思いますよ」
ただ、高尾くんもきちんと言葉という形で欲しかったと思うけど。
「彼は分かってましたよ、キミの不器用さなんて」
「そうか……。そうだよな」
「彼はよくできた人でしたから」
電車に乗ってる間、ぽつりぽつりと呟くように彼のいいところを言い合った。緑間くんは、今じゃなきゃ、素直になれない。珍しく、素直に思ってることを吐き出したがっているように見えた。
話は尽きなかったけど、全て過去形だった。
優しかった、気遣いができた、本当は真面目だった、勉強もできた、なんでもできた、子供が好きだった、面倒見がよかった。
電車に人が少なくてよかったと思う。
ボクも緑間くんも、泣いてしまった。大泣きは流石にしなかったけど、大粒の涙が二三、頬を伝った。
ボク等はお互いの顔を見て、笑った。
「あと少しくらいなら泣いても怒られませんよね?」
「ああ」
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