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壁にかけていた制服、机の上にあったテキストや筆記用具は、全てなくなっていて、極めつけは、ベッドのシーツが完全に剥がされていた。
颯人は俺よりも数日早く寮に戻ってきているはずだし、戻ってなくてもここまで全てが無くなっていることは、どう考えても変だ。
何があったかわけがわからず、逸る気持ちを抑えて、即座に颯人に電話をする。
数十回のコール音とともに、颯人がでた。
「もしもし、颯人?!」
『………一誠。』
電話からは颯人の声がするけれども、とても遠くにいるかのような存在に感じてしまう。
「今どこだ?!寮にいないのか?!」
かなり焦っている俺とは違い、颯人は何も返答してくれない。
嫌な汗がでてくるし、ドッドッドッと心臓の音が早くなる。
「なんか言えって!!」
今、電話が繋がってるかどうかもわからない。
しばらく沈黙が続くと
「……今からワックで話そ。」
とだけ告げられ、電話は切れた。
何も考える間もなく、ワックへと足早に向かう。
意味がわからなすぎて、もはや怒りにさえ変わっていく。
あの別荘での出来事は幻だったのかよ?!
そう思っても不思議じゃない。
颯人!どういうことだよっ!
ワックに着くと、すでに颯人がカウンター席をとっていた。
店内の奥で、他の席からは適度に離れているけれども、完全に死角ではない場所―
なんで俺をここに呼んだのか、なんとなくわかってしまうことさえ嫌だ。
冷静さを装ってドリンクを購入して、颯人の隣へと座る。
久々に見た颯人の顔は、別荘の時とは考えられないくらい暗い面持ちで、伏せがちだ。
……少し痩せた?たった1週間だってのに。
目も赤いし、どう考えても泣いてただろ。辛そうにしている。
でも、なんで?!
その答えを目の前にいる颯人から聞けるのだろうか…。
颯人をチラッと見ると、俯いたまま颯人は話し出した。
「夏休みになるとさ、何人か寮が合わないって実家に帰る奴が増えてくるんだってさ。」
無理やりいつも通りにしてくれてるように見えた。
「結構空き部屋もでてくるんだって。だから、部活している俺としてない一誠じゃ生活リズムが合わないってことを理由に部屋変えてもらった。」
「………っ!」
思わず怒鳴りたくなるけれども、理性が働いた。ここで叫んだら、誰もが俺たちに注目する。
「なんで、そんなことを……」
聞きたくない気持ちもあったけれども、核心に触れた。
颯人はファンタを飲むと、ゆっくり話始めた。
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