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最後の願い
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その夜、初めて、間宮は、僕を普通に抱いた。
黒毛縄で縛ることもなく、ただ、普通の男のように。
間宮のキスで、僕は、意識が飛びそうになった。
優しくて、それでいて、僕の全てを奪うような口づけだった。
間宮は、僕の体中にキスして、触れて、そして、僕に歯痒いような快楽を与えた。
間宮に触れられれば、触れられるほどに、僕の体は、熱く疼いていった。
僕は、いつの間にか、自分自身の高まりを自らの手で扱いていた。
「あっ・・はっ・・んぅっ・・ま、みや」
「雪緒、どうした?」
間宮は、後ろから僕を抱き上げて自分の膝の上に座らせた。間宮の芯を持ったものが僕の尻に当たっていて、僕は、後孔がじんじんと疼くのを止められなかった。
「んっ・・ま、みや・・も、いれて・・」
「雪緒」
間宮は、僕の耳元で囁いた。
「もう、欲しいのか?」
「ひぁっ!」
間宮が僕の後孔を彼のもので貫いた。僕の体を電気のように鋭い快感が走った。僕は、声が漏れないように両手で口許を覆った。その手を間宮が、捕らえた。
「お前のかわいい声を聞かせてくれよ、雪緒」
「んっ・・でも、はずかし・・」
「いいから」
間宮は、僕の手を捕まえたまま下から僕を突き上げた。
「哭けよ、雪緒」
「あぁっ!・・は、うっ・・」
「お前は、突かれながらここを弄られると、すごく締まるんだよな、雪緒」
間宮は、僕の前を擦りながら、僕を突き続けた。僕は、すぐに精を放ってしまった。が、間宮は、僕の中に残ったまま、僕を責め続けた。僕の内側は、とろとろに溶けて、間宮のものをきゅうきゅう、締め付けていた。間宮は、低く呻くと、僕の中をぐるんと掻き回した。内壁を擦られて、僕は、体を捩らせて、喘いだ。
この瞬間。
確かに、僕と間宮は、1つになっていた。
僕たちは、重なりあい、溶け合って、この感覚を共有していた。
「あ・・あぁっ・・まみ、や・・」
「見えた」
間宮が、囁いた。
「お前に憑いているものが」
「あぁっ!」
僕は、間宮の手の中に精を放った。同時に間宮も、僕の奥深いところに熱いものを吐いた。
翌朝。
僕が目覚めると、間宮の姿は、なかった。
一人っきりのベットで、僕は、なんだか寒気を感じていた。
季節は、夏なのに、僕は、凍えるほど寒かった。
なんで。
間宮は、行ってしまったのか。
僕を一人にして。
僕には、それが、なぜかわかっていた。
あのとき。
僕と間宮が1つになったとき。
僕も見たんだ。
僕に憑いている生霊の主の姿を。
間宮は、一言、その人の名を呼んだ。
詩、と。
僕に取り憑いていたのは、間宮の前の相方の詩さんだった。
だから。
間宮は、彼のもとへと行ってしまった。
僕を一人にして。
「なんなんだよ」
僕は、呟いた。
「ふざけんな」
僕を。
あんな風に優しく抱いておきながら、他の誰かのもとへ出ていった間宮。
なんで。
僕は、むしょうに腹が立っていた。
間宮に、ではない。
僕自身に、だ。
あんなクズで、ダメな男。
僕ではない、他の誰かを愛している男。
まったく。
大嫌いな男。
なのに。
なんで、僕は。
こんなに悲しい。
僕は、嗚咽していた。
「ウタちゃんと間宮は、子供の頃からずっと一緒に生きてきた」
マスターが僕に言った。
「あの二人は、特別だった」
バイト先で、ぼんやりとして失敗ばかりしている僕を、マスターは、責めることもなく、ただ、間宮と詩さんのことを話してくれた。
「普通、贄と退魔師は、子供の頃から生活を共にするもんだが、あの二人は、もっと近しい関係だった。あの二人には、お互いしか存在していなかったんだよ」
間宮の両親は、なんの力も持たない普通の人間なのだとマスターは、言った。それ故に、本家を嫌い、縁を切って生きている。だが、間宮が生まれた時、本家は、間宮を欲しがった。
「だから、二人は、間宮を捨てた」
奇妙な力を持った我が子を捨て、自分達の生活を守ろうとした両親を間宮は、許さなかった。そして、同時に、二人に自分を捨てさせた人々のことも拒絶した。
間宮は、心を閉ざして生きていた。
一人っきりで。
「そんな間宮が受け入れたのは、ウタちゃんだけだった」
詩さんもまた、間宮からすれば、捨てられた子供だった。
贄の才があったというだけで、本家に差し出された子供。
自分の運命も知らされずに、ただ連れてこられて、不安におののいていた幼い詩さんを間宮は、受け入れた。
「あの二人は、この世界に信じられるものは、お互いだけだったんだ」
「なら」
僕は、マスターにきいた。
「なんで詩さんは、間宮を捨てたんです?」
「捨てたんじゃない」
マスターは、言った。
「ウタちゃんには、奴のもとを去ることしかできなかったんだよ」
贄は、魔霊をその体に受け入れ、封じる。
その度に、贄の魂は、汚れて濁っていく。
そして、やがて、贄自身が取り込まれ、魔霊へと変化していくのだ。
だから、そうなる前に、贄は、その勤めを終え身をひく。
「ウタちゃんは、ぎりぎりまで堪えていたんだ。だけど、もう、これ以上は自分自身を留めておけなくなっていた」
二人の別れの時は、近づいていた。
「だが、離れがたかったウタちゃんは、賭けに出た」
ある日。
詩さんは、間宮に言ったのだという。
抱いて欲しい、と。
「贄としてではなく、ただの一人の人として、間宮に抱かれたいとウタちゃんは、思った。そうすれば贄ではなくても、恋人として間宮の側に残ることができる。そう考えたんだ」
間宮は。
「あいつは、ウタちゃんを抱かなかった。いや、抱けなかったんだ」
この世界の何よりも大切な存在である詩さんを間宮は、理由もなく抱くことができなかった。
そして。
詩さんは、間宮のもとを去った。
「だが、ウタちゃんは、間宮のことを忘れられなかったんだろうな」
自分が去ってすぐに、新しい贄を手に入れた間宮。
詩さんからすれば、どれほど悔しかったことか。
だから。
詩さんは、僕を呪った。
生霊になってまで。
間宮には、全て、理解できていたんだ。
僕と同化した時、間宮は、僕を通して、詩さんの姿を見たんだから。
生霊と化したかつての相方を見て、間宮は、たまらず彼の人のもとへと向かった。
詩さんを救うために。
それとも。
共に、滅ぶために?
「なんにせよ、救われないなぁ」
僕は、苦笑した。
「結局、僕が置いていかれたことに変わりはないんだから」
間宮が帰ってきたのは、一週間後のことだった。
僕がバイトから帰ると、いつもと変わらない様子で間宮が僕の部屋にいた。
違うのは、間宮が神妙な顔をしていたことだった。
僕は、黙って、間宮の前に座った。
間宮は、僕に頭を下げた。
「頼む。雪緒、力を貸してくれ」
何のために?
そんなこと、僕には、聞けなかった。
詩さんを救うため。
そのために間宮は、この僕に頭を下げたんだ。
僕に、他に、どう応えられるっていうんだよ。
間宮の最後の頼みなんだ。
そして。
僕と間宮の最後の仕事、だった。
「いいよ」
僕は、頷いた。
そのときの、間宮の顔が僕は、忘れられない。
ああ。
この男は。
本当に、無駄に見た目だけはいいんだ。
間宮は、泣きそうな顔をして言ったんだ。
「ありがとう」
泣きたいのは僕の方なのに。
僕は、泣くこともできなかったんだ。
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