アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ミスディレクション。
-
信が待ち合わせ場所であるとある公園の駐車場に車を停めると
まるで見計らったかのようにサングラスをかけたガタイのいい男2人が
自分の車に近寄って来るのが見え…
―――早速のお出迎えか…
準備がいいな。
信がパワーウィンドウを下げ、近寄って来た男達に視線を向ける…
すると男の一人がその口を開き…
「…斎賀 信さんですね?
我々と一緒に来ていただきましょうか。」
「…分かった。」
信はそう言うと車から降り、男達の後に続いてその場を離れる…
すると2人の後を歩きながら暫くすると信の目に
人目を避ける様に停められている一台の黒いEQS SUVタイプのベンツが見え…
―――これはまた…
下っ端が乗るような車じゃねーな。
誰だ?乗ってるの…
一歩ずつ車に近づくにつれ、信は車の窓ガラスに目を凝らすが
フィルムが張られている為か中は確認できず…
やがて車まであと数歩といったその時
男の一人が信の方に振り向くと――
信に向って手を差し出しながらその口を開き…
「…携帯を渡してください。」
「ケータイ?あぁ携帯ね。…生憎――家に置いてきた。」
「…では身体を調べさせてもらっても?」
「…どーぞ。」
そう言うと信は自ら両手を軽く上げ――
両脚も肩幅くらいまで開くと
もう一人の男が手際よく信の身体を上から下まで触りながら調べていき…
やがて信が何も持っていない事を確認すると
男はもう一人に目で合図を送り…
「…そうですか。でしたら――
そちらのスマートウォッチを外して渡してもらえますか?」
「ハァ~…あいよ。」
信は渋々スマートウォッチを手首から外し、近くにいた男に渡す
すると男は渡されたばかりのスマートウォッチを調べる事無く地面に落とすと
そのまま足で勢いよく踏みつぶし…
「あ~あ…
安物とはいえ――結構気に入ってたんだがなぁ…ソレ…」
「…そうですか。では車へどうぞ。」
そう言って男は後部座席のドアを開け、信に車に乗るよう促し
信も促されるままに億劫そうに車に乗り込むと、ドアが閉められ…
それと同時にドアロックも一斉にかかり――
―――やれやれ……ここまで来て俺が逃げるとでも思ってんのかね…ったく…
信が呆れ半分に溜息を吐きながら視線を前に向ける…
すると助手席に座っていた黒のパナマハットを被った男性が後ろを振り返り…
「…お待ちしておりましたよ?若頭…」
「ッ!?おまっ…御手洗…!?」
思いがけない人物の登場に信は目を見開いて驚き…
御手洗の方はそんな信の反応に気をよくしたのか微かな笑みを浮かべると
ゆっくりと言葉を続け…
「…念のため――後をつけられていないかの確認をしておりますので
出発まで少々お待ちを…」
「はっ……まさかお前が直々に迎えに現れるとは思ってもみなかったぜ。
御手洗…」
「フフッ…ようやく欲しかったものが手に入るというのに
これを自らお出迎えしないというのは失礼というもの…」
「…相変わらず何言ってんのか分かんねぇな。お前は…」
「ンフフ……そのうち嫌って言うほど理解できますよ。
そう…“彼”のように…」
「……彼…?」
「フフッ…」
御手洗が意味ありげな笑みを浮かべる…
すると助手席の窓がコンコンと叩かれ――
それに気づいた御手洗がパワーウィンドウを下げながら、外の男に向って口を開く
「…で、どうだった?」
「尾行はいない様です。」
「…そうか、分かった。」
そう言って御手洗が助手席の窓を閉めると
隣の運転手に声をかけ…
「では……陽炎町にある川原第四倉庫まで向かってもらいましょうか。」
「…分かりました。」
「…?」
―――陽炎町にある川原第四倉庫??
そんな名前の倉庫……
御手洗の不動産を示す名簿には載ってなかったハズだが…
信は不審に思い…
怪しまれないよう御手洗に声をかける
「…なんだその川原第四倉庫っていうのは…」
「おや……気になりますかな?」
「そりゃー…まあな…
俺としてはさっさと弟の無事を確認したいし
寄り道なんかしてもらいたくはないんだが…」
―――どうせ目的地はHôtel désirなんだろう?
倉庫なんかに一体何の用が…
信が募る苛立ちを抑えながら鋭い視線を御手洗に向ける…
すると御手洗がニヤリと厭らしい笑みを浮かべ…
「心配しなくても……“寄り道”ではありませんよ。」
「………何?」
「川原第四倉庫は“目的地”です。」
「ッなんだと…?」
―――っそんなハズは――――――――ハッ!
まさか…っ!?
信は自分が犯してしまったかもしれない過ちに気づき
激しく動揺し始める…
―――そうだ……俺は何て馬鹿なんだ…っ!
俺はてっきり“Hôtel désir周辺でGPS反応が消えた”から…
だから葵達はHôtel désir……もしくは“御手洗の所有する不動産のどれか”に
連れ去られたのだとばかり思い込んでいたが…
だが……考えてもみろ。
果たしてこのずる賢い狸が――
わざわざ自分の所有する不動産に誘拐の証拠である葵達を連れ込むと思うか…!?
『私の経営するホテルやバー…クラブなどといった施設に
“私の見知った顔”が一人でも現れたら…
その時は弟君がどうなるかは――分かってますよね…?』
―――この会話自体が既にブラフ…
俺に“葵達を連れ去ったのは自分”だという事を認識させたうえで
さも葵達の監禁場所が“自分の所有する不動産の一つ”であるかのような
錯覚を誘う為の…!
「…おや……どうかなさいましたかな?若頭…
顔色が悪いようですが…」
「ッ…別に…」
―――マズイ…
「…ひょっとして――目的地が私の所有する不動産の一つじゃなくて…
焦っておられる…?」
「ッ…、」
「…図星ですね?ンフフフフ……
しかし安心してください。
弟君(おとうとぎみ)とはちゃ~んと目的地で再開させて差し上げますから…」
そう言うと…
御手洗は勝ち誇った笑みを浮かべながらたるんだ顎の肉を満足そうに撫でた…
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
175 / 203