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自分が誘拐犯なら…
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「へぇ~…信がそんな事を僕に…?」
信のマンションに辿り着いた片瀬たちは早速
信の父親である稔(みのる)にスマホを渡しながら事情を説明し…
「…はい。ですから親父さんにはまず
“Hôtel désir”周辺にあるらしいジャマーの無効化と監視カメラのハッキングを――」
「…ちょっと待った。」
「…?」
「その前にまずは確認させてもらいたいんだけど…
信は16時に新田白樺公園に向かうよう…その御手洗ってヤツに
指示されたんだよね?」
「はい…」
「ふむ…」
―――今は――15時43分か…
稔は渡されたばかりの信のスマホで時間を確認すると
ほんの僅かな時間…考える素振りを見せ――
「…よし分かった。」
「ッ!じゃあ…」
「でもその前に――ちょっとやることあるから
5分くらい時間もらえる?」
「え…?」
そういうと稔は呆気に取られている片瀬たちを残し、さっさと信の書斎へと向かうと
渡されたスマホで書斎の鍵を開ける…
すると部屋の正面に見る者を圧倒する6面マルチモニターが見え…
「ほぅ…こりゃまた随分と生意気なのを…」
稔はマジマジとそのモニターと
近くに設置されていたタワー型のパソコン本体を眺めながら机に近づくと
椅子に座りながら早速デスクトップパソコンの電源を入れ
―――多少弄ってはいるようだが…●ouseのMH-I7G50か…悪くない…
稔がモニターに目をむけると、そこにはパスワード入力画面が表示され――
稔は教えてもらってもいないのに、次々とその画面にパスワードを入力していく…
するとパソコンは難なく起動し――
「ビンゴ~!では早速――」
稔は両手の指先を解す様に
何度かグッパーグッパーと掌を握ったり開いたりを繰り返すと
キッとモニターに向き合い…
「…やりますか。」
一つ大きく息を吐き出し…呼吸を整えると
稔は凄まじい速さで目の前のキーボードに何かを入力し始めた…
※ ※ ※
稔がパソコンで作業し始めてから約五分後…
書斎の扉がカチャッ…と遠慮がちに開き…
「あのぉ~…そろそろ若が頼んだことを―――って
何かもうやってる!?」
「お!来たのかい?キミ達…」
片瀬たちがおずおずと書斎に顔を覗かせると
6面モニターの前に座ってた稔が笑顔で振り返りながら口を開き…
「いま丁度――
“信の乗った車を捉えたところ”だよ。」
「え…どーゆー事っすか…?」
稔の言っている事の意味が分からず…
片瀬たちが不審に思いながら稔に近づくと
6面モニターにはそれぞれ別の場所を映した映像が流れており…
「何すか?この映像……何処かの監視カメラの映像のようですけど…」
「ああコレね。コレは新田白樺公園周辺の監視カメラの映像だよ。
あ!ホラ、右上のモニターを見て。
今信の乗った車が駐車場に入ってった。」
稔が右上のモニターを指さすと
そこには信の物と思われる黒のマセラティが
丁度駐車場に入っていく姿が映っていて――
「…確かにアレは若のマセラティっすけど…
けどコレに一体何の意味が…?
それに我々の依頼は“Hôtel désir周辺のジャマー無効化と
監視カメラのハッキング”であって
若の追跡じゃあ――」
「まあまあそう焦らず…
とりあえず僕の考えを聞いてくれるかい?」
「…?」
稔は再び椅子ごとクルンと片瀬たちの方に向き直ると
その長い両脚を組ながら静かに口を開き…
「…実はさぁ……僕思ったんだけど…」
「…?」
「もし自分たちが誰かを誘拐した場合――
誘拐したその子を…
わざわざ危険を冒してまで自分の家に連れ帰るかなぁ~…って疑問に思って…」
「「ッ!?」」
「いや…金のない変態が突発的に自分の家に女児や男児を連れ込んで
事件を起こす事はよくある話だよ?悲しい事だけど…
けどさぁ…相手はあのホテル王と名高い御手洗 壮一でしょう…?
そんな人が事件性のある誘拐で――
わざわざ自分の足がつくような…
ましてや調べればすぐ分かるような自分の所有する物件に
葵君たちを連れ込むような真似なんてするかなぁ~…って
ふと考えちゃってさ…」
「えっ……じゃあHôtel désirはハズレって事…?」
「いや…まだ分かんないよ?だから一応念のため信の言ってた
Hôtel désir周辺の監視カメラのハッキングなんかももう既にやってはいるんだけど…」
「けど……なんすか?」
「無駄じゃないかなって。」
「そんな…」
それを聞いて片瀬たちの表情が一気に暗くなるが――
その様子に稔が苦笑を浮かべながら話を続け…
「まあまあそう落ち込まず…とりあえず僕の話を最後まで聞いて?
それでね?僕が思うに葵君たちを見つけ出す確実な方法って結局のところ…
御手洗に呼び出された信本人を追跡する方が
一番手っ取り早いんじゃないかな~って思ってさ。」
「あ…」
「言われてみれば確かに…」
「でしょ?そこで僕の考えなんだけど――あ!ちょっと待って。」
稔は再びモニターの方にクルンと向き直ると
6面モニターの上部中央に映る映像をしきりに確認しながら
キーボードを操作しはじめ…
「これ見て。」
「「…?」」
タン!と稔がEnterを押すと、上部中央のモニターに映る映像がアップになり…
そこには木の影になってて見えにくいが
信とみられる人物が黒のベンツに乗り込む姿が見え…
「ッ若!」
「…信の奴……どうやら乗ったようだね。敵の車に…」
稔たちが画面を注視していると
やがて信を乗せたベンツがゆっくりとその場を離れ始め…
稔はその映像が流れるモニターから視線を離す事無く
片瀬たちに向って言葉を続ける
「…で、ここからが僕の考えた作戦なんだけど……聞いてくれるかい?」
「…ベンツを追うんでしょ…?葵ちゃん達や――何より若の為に…」
「その通り!
そのせいで信の計画を無視する事になっちゃうけど……いいかな?」
「全然オッケーっす!Hôtel désirの方も気になるっちゃあ――気になりますけど…
けど親父さんの好きにやっちゃってください!
それで葵さんたちや若が助けられるのなら…!」
「分かってくれて嬉しいよ。さてとそれじゃあ――」
稔は再び掌を握ったり開いたりを繰り返すと、改めてモニターを見つめ――
「早速始めますか!
信と葵君たちを無事に助け出す為にも…」
そう言うと…
稔は何時になく真剣な眼差しで作業にかかり始めた…
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