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4-1 ※side K
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智樹を尋ねようと、アパートの前まで来たものの、足が一向に前に進まない。
どんな精神状態でいるのか、不安で堪らなかった。
ああ見えて案外弱いんだよ、あの人……
第一、雅也と潤一君のした事を、なんで俺が謝んなきゃいけないのか、まず分からない。
ま、潤一君との関係を知ってて放任してた俺にも、責任の一旦はあるから、それも仕方ないのか。
それに、翔真さんのことで、智樹に話とかなきゃいけないこともあるし……
多分コレが、足が前に進まない原因何だろうな。
出来る事なら話したくはないから。
だって智樹の泣いた顔、見たくないんだよ。
智樹にはずっと笑ってて欲しいから……
築ウン十年の古びたアパートの窓を見上げていると、ふと昔の記憶が蘇った。
俺達はいつも五人でいた。
楽しいことも、悲しいことも、いつも五人で分け合ってきた。
時にはバカやったりもしたけど、それも今となってはいい思い出だ。
結ばれるべくして結ばれた絆、って言ったらカッコよすぎるかもしれないけど、個性も育ちも違う俺達が、友達と呼べる関係になるのに、大したきっかけも理由も必要なかった。
ま、敷いてあげるなら、雅也の明るさが五人を引き合わせてくれたのかも知れない。
じゃなきゃ、俺みたいな奴がこの五人の中にいられる訳がない。
翔真さんも、潤一君も、雅也も……皆凄くキラキラしてた。
でもその中で、智樹だけはちょっと違ってて……
いつもボーッとしてて、何考えてるのかさっぱり分かんないし、とにかく不思議な人……それが俺が受けた智樹の第一印象だった。
なのに五人の中では智樹はリーダー的存在で、皆口には出さなかったけど、智樹のことを凄く慕っていた。
でも俺はそれが理解出来なかったし、何故智樹がキラキラした人達の中心にいつもいるのか、納得出来なかった。
だって、俺が思う”リーダー的存在”って、翔真さんみたいにちゃんとした意見の言える人や、潤一君みたいに熱い闘争心のある人だと思っていたから。
智樹は、俺の理想からはかけ離れ過ぎていたから……
ある時、俺は翔真さんに聞いてみたことがあった。どうして智樹なのかって。
そしたら翔真さん言ったんだ。
一見すると困ったようにも見える、眉尻を思いっきり下げた笑顔で、
「確かにボーッとしてるし、何考えてるか分かんないとこあるけど、智樹はいつだって皆のこと考えてるよ。寝てるか起きてるか分かんないようなフリしてっけど、実はちゃんと見てんだよ、あの人。だから智樹の言葉に間違いはないんだよ」
尊敬に値する人だ、って。
正直、その時は翔真さんの言ってる意味が、俺には全く理解出来なかった。
でも、あの時分かったんだ、翔真さんの言葉の意味が。
俺みたいに暗くて、ゲームしか取り柄のない奴がさ、あんなキラキラした奴らとつるんでたらさ、当然だけど妬んでくる輩がいるわけで……
ある日を境に、所謂“イジメ”ってヤツが始まった。
靴が片方無くなってたり、ノートや教科書に悪戯書きされることなんて、日常茶飯事で……
その程度の嫌がらせなら、小中学校の時にも受けたことがあったから、我慢出来なくもなかった。
でもアイツらには俺がイジメを受けてるなんて、恥ずかしくて相談できなかった。
俺さえ我慢すれば良いんだって……
だから笑顔の下でいつも泣いてた。
“助けて!”って……、心の中で大声で叫んでた。
だって俺、アイツらと一緒にいたかったんだもん。
アイツらと一緒にいれば、俺もキラキラ出来ると思ってたんだ。
だけどさ、俺がアイツらと一緒にいればいただけ、イジメはエスカレートして九一方で……
終には俺がアイツらと離れた隙を狙って、数人がかりで体育倉庫に連れ込まれてさ、身ぐるみ剥がされてマットでグルグル巻きにされてさ……
抵抗出来ないのを良いことに、散々殴る蹴るの暴行されて……
マットで巻いときゃ痣も残んないから、ってさ……良く考えたもんだよ。
そんなことが暫くの間続いた。
凄く辛かったし、身体に感じる痛みよりも何よりも、心が痛かった。
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