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59 ウッディコング編
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新しくなった剣を受け取り、さっそくタオと狩りに出かけた。馬に乗って向かうのは、先日ピンキードラゴンを倒した山だ。
つっても、オレらが狙うのはウッディコングやウッディベアだ。
タオはともかく、オレにはちょっとレベルが上で倒しにくい相手。けどこの間は一応、集団戦だったけど戦えたし。新しい剣を持って、力試ししねぇ選択肢はなかった。
この間は厳重に封鎖されてた山も、今はまた通常通り、誰でも入れるよう解放されてた。
もう木から木へ飛び移ったり、ヤブを掻き分け飛び越えたりする必要はねぇ。普通に馬で山道を登り、狩場に良さそうな場所を探した。
濃密な緑の気配は相変わらずで、慣れねぇ空気に身を引き締める。
「来るぞ、前に1、後ろに2!」
タオが言うなり、双剣をすらっと引き抜いた。
ピンキードラゴンの素材で強化された剣は、前より軽くて前より鋭い。オレも剣を引き抜いて、構えを取って握り締めた。
サファイアと水色の竜玉とがキラリと陽光を反射する。
直後、向こうのヤブを飛び越えて、巨大な猿がこっちに襲い掛かって来た。
「はっ!」
ウッディコングだ、と考えるより先に体が動く。風の守護をまとう剣を振りきって、敵の前足を切り付け、無防備になった腹に飛び込む。
まだアーマーを着てる訳じゃねぇ。オレの動きの速さは前と変わんねぇハズなのに、県が軽いと動きも速い。
ギャアッ。腹を突き刺すと同時に、ウッディコングの悲鳴が上がった。
そのまま素早く剣を引き抜き、ステップ踏んで後ろに下がって、今度は冗談から振り下ろす。
「くらえっ!」
ザシュッ。剣に手ごたえを感じ、どうっとウッディコングが倒れ伏した。振り向くと、タオの方も終わったらしい。ウッディコングが2匹、向こうの足元にも倒れてた。
「余裕っぽかったじゃん、アル」
タオの誉め言葉を「まあな」と受け取りながら、倒れたモンスターを足で蹴り、確実に仕留めたかどうかを確認する。
ウッディコングは大きいだけに、剥ぎ取りできる毛皮もデカそうだ。
「肉は食えたっけ?」
「猿は食えねーだろー」
「食えんのはベアの方か」
そんな会話を交わしつつ、タオは油断なく、敵が来てねーか周りを見てる。オレの方も警戒は上級者のタオに任せ、丁寧に素材を剥ぎ取った。
油紙に包み、皮袋に入れ、馬の背中に背負わせる。
ピンキードラゴンと対峙した時、同じくモンスターを倒したけど、そん時は馬もいなかったし、素材を剥ぎ取る余裕もなかった。
やっぱ、よく知らねぇ相手とはなかなか一緒には戦えねぇ。
タオか……ミーハじゃねーと。
剥ぎ取りナイフを鞘に納め、サファイアの剣をちらりと見る。
ミーハと一緒なら、さっきのはどう戦っただろう? こんな森の中じゃ『火球』は使わせらんねーし、やっぱ『水球』か? それとも……『雷矢』か?
「行くぞ」
タオにぽんと肩を叩かれて、「ああ」とうなずき馬を引く。
まだ山には入ったばっかだし、モンスターだって狩り足んねぇ。新しくした剣を振り、もっともっと経験値を積んで強い剣士になりてぇ。
再び山道に戻り、しばらく上に向かって進んでくと、また数匹のウッディコングに出くわした。どうやら今日は、猿にばっか当たる日らしい。
「アル!」
「分かってる」
タオの声と共に剣を抜き、襲撃に備える。
道の左右でザザザザと木々の揺れる音がして、モンスターが迫るのが分かった。
「左2匹、任せっぞ!」
「おう!」
返事すると同時に1匹目が顔を出し、道沿いの高い木の上から飛び降りて来た。
まともに受けてたんじゃ、力負けすんのは分かってる。
素早く身をひるがえし、ギリギリで避けて剣を振る。背中を1度切り裂いて、振り向かれる前に後ろ足を突き差し、後ろに逃げる。
もう1匹の気配をヤブの向こうに感じながら、わざとそっちに背を向けて、手負いのウッディコングを剣を掲げて挑発する。
グギャアーッ。
吠えられて威嚇されたけど、そんなのピンキードラゴンのと比べりゃ、ドキッともしやしねぇ。
さっき突き刺した右足を庇いながら、オレに飛び掛かって来るウッディコング。
挟み撃ちするつもりなのか、それとも偶然か? 背後にいたもう1匹も「ギャーッ」と威嚇の声を上げて、ヤブからこっちに飛び出して来た。
地面を転がり、間一髪で攻撃を避ける。オレの目の前で2匹のコングがぶつかり合い、絡み合ってダンゴになる。
今だ、と思った。
こんな時、ミーハがいたら――。
ちらりと頭に浮かんだ考えを打ち消して、思い切りジャンプして体重をかけ斬り伏せる。
毛皮のダメージのことを思い出したのは、2匹を倒しきってからだ。
いつもはなるべく1撃で倒そうって狙えるのに。どうしても3、4手はかかっちまって、最初から心臓だけ狙うことができてねぇ。
「アル、やるじゃん」
「いや……」
タオの言葉に首を振り、サファイアと龍玉の剣をしまう。
ヤツの足元には4匹のコングが転がってて、さすが天才はすげーなと思った。しかも、馬の守護まで任せちまってたみてーだ。
ハマー(馬)のことなんか、すっかり頭から抜け落ちてた。
「ワリー」
軽く謝って鼻面を撫でると、ハマー(馬)がふんと鼻息を吹きかける。
『は、ハマちゃんは、大事だ、よっ』
ミーハがぐっと両手を握り、鼻息荒く怒ったような気がした。
「まだまだ未熟だな、オレ」
ぼやきながら剥ぎ取りを開始すると、タオは馬2頭を撫でながら、「そうかー?」といつもの調子でニカッと笑った。
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