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デザートワームボスを目撃したっつーオレらの証言は、オアシスを震撼させた。
口径のデカさから、およその全長、どこら辺で見かけたとか、事細かく報告させられた。
「デザートシャークを一呑みだったかんな」
「こんくらいか」
タオと2人して大きさを表現し、そのたびにどよめきが起こる。
デザートシャークが出て来てたっつーのも問題だけど、それを一呑みにするような怪物が出たっつーのも問題だ。サメだけを駆逐してくれりゃいいけど、そんな都合のいいモンスターはいねーだろう。
「懸賞討伐になるな……」
オアシスの責任者みてーなオッサンらが、困ったように会話してた。
結局、砂漠の街を含めた全域からの依頼になったって聞いたのは、翌日のことだ。デザートワームボスの討伐、および、巣の駆逐。
王都の方にまで討伐依頼を出したっつーから、オアシスの本気度が分かる。
さすがにオアシス内で、例の赤枠の張り紙を見ることはなかったけど、オレらも討伐メンバーに入るつもりだ。
もしかしたらミーハも……と淡い期待を胸に抱きつつ、ボスの姿を探して砂漠に繰り出す。
ザコな方のデザートワームは山ほど出て、それもあのウッディーコングの時と同じだなと思った。
「万が一巣を見つけたら、これを」
つって、責任者のオッサンから、狼煙玉も受け取った。火を点けりゃもくもくと煙が上がって、目印になるそうだ。
辺り一面砂だらけの砂漠じゃ、確かに正確な場所は伝えにくい。こういうのも確かに、必要かも知んなかった。
昨日と同様、オアシスからそこそこ移動しつつ、デザートワームを倒しては荷車に詰め込む。
荷馬車じゃなくて、馬に乗った方が速ぇし楽だとは思うけど、デザートシャークを呼びそうで、ワームの死骸を放置できねぇ。
ワームの死骸がシャークを呼び、シャークの血がボスを呼ぶってなると、大変だ。
オレら賞金稼ぎからすると、オアシスから近いとこに出て貰った方が楽でいーけど、それだと危険過ぎてオアシスが封鎖されちまうし。住人のこと考えると、下手な真似はできねーよな。
だから、片っ端から狩って、片っ端から荷馬車に積んでる訳だけど……大量のワームを山のように積み上げた様子は、なんつーか視界に対する暴力だ。
その内見慣れんのかも知んねーけど、こんなことに慣れたくねぇ。
ただ、1日に何百匹も狩ってたからか、ボコッと穴が開くより先に、気配を感じるようにはなって来た。
ウッディーコングの時みてーに、1匹いくらとか値段はつかねーし、あんまおいしい仕事じゃねーけど、ボスの出現を待ってぼうっとしてるって手はねーから、やるしかねぇ。
「食えるだけ猿よりマシじゃね?」
タオの意見に、「まーな」とうなずく。
尻尾だけで討伐証明になって、1匹いくらで賞金が貰えたウッディーコングと、食用として買い取って貰えるデザートワームと……どっちが旨味があるかっつーと、ビミョーだ。
っつーか、オレらがこんだけ山盛りに入荷してると、その内買い取り価格も、値崩れしそうだと思った。
「食うのかよ!」っつーツッコミはなしだ。未だにどれがワームの肉なのか確かめてねーけど、メシ屋のオバサンが「美味しいでしょ?」とか言ってたから、食わされてんのは確からしい。
いや、原型がワカンネー分、サソリの素揚げよりマシなんだろうか?
ワーム肉を食うっつったら、ミーハはどんな顔するだろう?
ミーハのことを思い出し、砂漠の稜線を眺めてため息をつく。ポケットにはずっと、あのブレスレットを入れたままだ。
デザートワームボスの討伐で、ミーハが派遣されて来るかどうかはまだ分かんねぇ。
来て欲しい、会いてぇとは思うけど、オレの望みが叶うとは限らねぇ。
砂漠での共闘を最後に、オレの腕ん中から消えたミーハ。あのミーハを再び砂漠で取り戻してぇなんて、甘い考えだって分かってた。
「また来たぞ!」
「おお!」
タオの警告に剣を構え、荷馬車の御者台から飛び降りる。
ボコボコと周辺に穴が開くのを察知して、その穴の前で待ち構え、飛び出しざまにワームを斬る。
相変わらず軟い肉質。大した手ごたえもなく、山のように積み上がる死骸。流れ作業でそれらを荷馬車に積み込んで、またボスを探しながら、砂上に馬を走らせる。
幸か不幸か、デザートシャークに襲われることはなかったけど、それらしい骨が無数に散乱してんのは発見した。
真ん中でバックり折れてる、巨大な背骨を拾い上げてゾッとする。
ボスワームの口なんて、とっさに見てる余裕はなかったけど、すげー牙が生えてそうだ。
「これ、ヤベーな」
「ああ、ヤベェ」
タオと2人、同じ感想を抱きながらモンスターの骨を拾い上げる。
新旧ごちゃ混ぜだから買い取り価格は下がるだろうけど、これだって十分な素材だし。何より、ボスの存在の証明になる。
「探せばこの辺に、巣がありそーだな」
骨を荷馬車に積み込みながら、そんなことを言うタオは、勿論すげー嬉しげだ。
オレだって大物を前にしてドキドキする気持ちがねぇ訳じゃねーし、頼もしい限りだけど、今はまず報告が先だろう。
デザートワームボスの巣なんて、砂の下に決まってる。オレらだけで掘り返すのは、当たり前だけど不可能だ。
「骨積み上げたら、一旦帰んぞ」
タオに忠告しながら、預ってた狼煙玉に火を点ける。
狼煙玉からもくもく上がった煙は、毒々しいくらいに真っ赤で、砂漠の砂の色にも、青い空にも、よく映えた。
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