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オアシスに急いで帰ると、既に大騒ぎになってた。
「巣を見つけたのか!?」
オッサンらに食って掛かられて、「多分」と返す。
「こういう骨がゴロゴロ転がってた」
そう言って荷馬車の上を見せると、さすがにどよめきが走った。
目利きらしいオッサンが荷馬車の上に乗り込んで、持って来たデザートシャークの骨を調べる。
「間違いない、歯形がある」
オッサンが難しい声で言った言葉に、再びみんながどよめいた。
「デザートワームの数も多いな」
「確か10年前にも似たような事が……」
ざわめく住民たちから1歩引き、馬でさっきの場所に戻るべく、荷車を外す。
野次馬ん中にはハマー(人間)もいて、さすがに心配そうにオレらんトコまで寄って来た。
「アル、タオ。大丈夫かぁ?」
「おー、まあ1度遭遇しただけだしな」
ハマー(人間)の問いかけに、笑って答える。
「次は逃がさねーぜ。なっ!」
タオも自信たっぷりに、オレとハマー(人間)の肩に腕を回した。
逃げたのはどっちかっつーと正直ビミョーだけど、オレだって次は逃げねーし、逃がさねぇ。
「デザートシャークの死骸に、毒でも詰め込むか」
「じゃあ、その前に1匹捕まえて来ねーとな」
タオと2人、そんな対策を立てながら、馬の鞍を用意する。
遠回りなようだけど、近道かも知れねぇ。そう思いながら、出発の準備を進めてると――。
ザンッ。
そんな音と共に、オアシスの中央広場に10数人の人間が現われた。
その中に、白いフードつきのローブを着込んだ魔法使いの姿を見て、ドキッと心臓が跳ね上がる。
魔法使いは3人、鎧やアーマーを着込んだ剣士らが10人。王都からの討伐隊だって、名乗られなくても気が付いた。
「討伐隊かぁ。今頃来たんかよ?」
タオが好戦的に声を掛けると、討伐隊の間から、「『赤の』……」って声がざわざわと聞こえた。
どうやら「赤い閃光」の顔はコイツらも知ってるみてーだ。
自分の名前を期待する程うぬぼれてはいねーけど、タオの名前が知られてんなら、討伐隊に食い込むことも不可能じゃねぇだろう。
「またお前らか」
うんざりしたような声に目を向けると、漆黒の鎧をまとったルナもいて、まあ当然だなと思った。
「それはこっちのセリフだっつの」
ニヤッと笑いながら言い返し、タオの横に堂々と立つ。
「発見者はオレらだぜ」
「マジかよ」
ルナの言葉に、「ああ」とうなずく。
「ついでに、巣らしき場所を見つけたのもオレらだ」
オレの言葉に、ルナがちっ、と舌打ちをした。けど、「嘘だろ」とは言わねぇ。「ついて来んな」とも言われなかった。
以前とは随分扱いが変わったよな。そう思うと、感慨深ぇ。
砂漠でミーハを挟んで共闘してから、数ヶ月。この成長が早ぇのか遅ぇのか自分じゃ分かんねーけど、手ごたえを感じられて嬉しい。
「だったら案内しろよな」
ルナの傲慢な命令に、ニヤッと笑える。タオもオレの隣で同じ顔して笑ってて、「当たり前だろ」ってうなずいた。
そうしてルナらと向かい合ってる最中、斜め後ろから、つんつんとシャツの袖が引かれた。
何だ、と思って目を向けると、白いフードを被った魔法使いが立ってて、ドキッとする。
思わずそのフードをめくり上げると、柔らかな薄茶色の髪が見え、ほんのり赤く頬を染めたミーハの顔が現われた。
「ミーハ……」
衝動的に抱きしめたくなんのをぐっと耐え、目の前の頭をぽんと撫でる。
「また会えたな」
笑みを浮かべながらそう言うと、ミーハは更に顔を赤くして、「あっ……」って言葉を詰まらせた。
「アル、っ、君」
名前を呼ばれて、ズキッと胸が痛む。
オレの名前を呼ぶ声も、オレを見て頬を染める様子も、何もかも同じに見えてちょっと違う。
記憶が戻ってねーのは丸分かりで、でもそれでも愛おしくて、余計に胸が痛かった。
その痛みを無理矢理奥に押し込めて、平気なフリで話しかける。
「お前もボス討伐に来たのか?」
「う、ん。アル君、も?」
「いや、オレらは発見者なんだよ。な」
タオの方に話を振ると、ミーハは「ふおお」と目を輝かせ、「スゴイ」ってオレらを讃えてくれた。
相変わらず素直で、純真で可愛い。
「会えない、と、思ったら、こっち来てたの、か」
って、ぼそっと呟いてるのも可愛い。
もしかしてミーハも、オレに会いてぇと思ってた? オレらが王都で門前払いされてたこと、やっぱコイツの耳には入ってねーんだろうか。
ポケットに入れっぱなしの、ブレスレットが頭に浮かぶ。けど、それを掴み取る前に……。
「ジュニア様」
同行して来た魔法使いが、ミーハに冷たい口調で呼びかけた。
相変わらず、ミーハの扱いはあんまよくねーようだ。天才だ何だと持ち上げておきながら、その努力を正当に評価しねーとか、最悪だ。
ちっ、と舌打ちして睨みつけてやったけど、魔法使いたちはオレのことなんか相手にする気もねぇらしい。
「討伐に向かう頃合いです。ご準備を」
「さあ、こちらへ」
口々にそう言ってミーハを追い立て、オレらから強引に引き離してく。
オレが無名だからいけねーんだろうか? それとも、前回の「転送」をそそのかした件で、警戒でもされてんだろうか?
「おい、待てよ」
ミーハを引き留めるべく声を掛けたけど、あからさまにスルーされて、それ以上は話もできなかった。
「アル、抑えろ」
「そういうのは、ボスを倒してからやれ」
タオとルナに抑えられ、ちっ、と大きく舌打ちをする。
確かに言われるまでもなくその通りで、好きだ何だって感情に振り回されてる場合じゃねぇ。
デザートシャークの骨を見つけた経緯を教え、まだもくもくと上がってる狼煙玉の赤い煙を指差す。
現場までは、「転移」で向かうらしい。
ルナらの中に混じって待機してると、さっきの偉そうな魔法使いが杖を振り上げ、呪文を唱えた。
「テレポート」
その瞬間、強烈な光が視界を白く焼いて――目を開けると、さっき自分で火を点けた赤い狼煙玉の側にいた。
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