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だが、迂闊に殺してしまえない理由が一つだけある。
「そう簡単に、抹殺できたらいいんだけどな」
「何か問題でも?」
「あの魔王様だよ」
俺はヴィンセント様の部屋を一瞥し、続ける。
「出会う前ならいくらでもやりようがあった。だがカイルの存在を認知してしまってる以上、そのカイルがこの世からいなくなれば、あの方が黙ってはいないだろう」
「黙ってないどころか激怒だろうね。激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム」
ロキが謎の呪文を唱え始めたのには困惑するしかなかったが、まあ言いたいことは分かる。その場合「ぷんぷん」では済まないだろうが。
「仮にも魔王様が好意を向けている相手を殺してしまったりでもしたら、後が大変だ。この中でキレた魔王様を抑えられる自信があるやつは手を挙げてくれ」
しーーん……
「だよな。俺だって無理だ。下手をすれば魔族壊滅どころかラグナロクすら起きかねないからな」
「ちっ!」
ダン! と机を叩くヴァルーア。この男は外見からも見て取れるが非常に神経質で、いちいちリアクションが大袈裟である。そのせいで、幹部クラスの中では実力は頭一つ抜けているほど優秀なのに、話している限りでは小物臭がしてしまう。俺にはよく「貧血野郎」と罵ってくるが、この男こそ深刻なカルシウム不足だと思う。舌打ちか机叩きか、どちらかにすればいいものを。
「ではこのまま魔王様が勇者に骨抜きになる様を、指をくわえて見ているしかないというのか!」
「ーーそれに関してだが、一応策は練ってある。なあロキ」
「うん。名付けて『媚薬で即ハボ! 淫乱作戦』」
どんどんぱふぱふー。呑気を極めたロキによるセルフSE。空気が読めているのか読めていないのか。
「俺が水面下で動き、直々にカイルを快楽に抗えない性奴隷へと堕とす。まだカイルを知ってから日の浅いヴィンセント様は、実はカイルが淫乱だということを知ると途端に熱が冷めるはずだ。ヴィンセント様の勇者の理想像の中に淫乱という要素はなかったはずだからな」
ヴィンセント様が日頃何かにつけて語る勇者像がこんなところで役立つとは思わなかった。
「……なるほどな」
ここでヴァルーアがようやく別の種類のため息を吐き出した。光明が差し、精神的に落ち着いたようだ。こういった類の召集ではいかにヴァルーアが納得のいく結論に辿り着けるかで終了時間が左右される。今回はまだ短いほうだった。
「確か今日明日中にここへ連れてくると言っていたが、もう手は打ってあるのか」
「カイルには理事長との面談があるという理由を使って、一人で理事長室に来るよう伝えてある。あとはさっき話した計画通りだ」
「ぬかるなよブラッドリー。魔族の明日がお前の手にかかっているのだからな」
やはり面倒ごとは、最後に俺のところへ回ってくる。もはや自然の摂理のようであった。
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