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第4章 Asymmetrical 10
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程なくして、圭がメイク落としと俺の荷物を手に、支配人室のドアをノックした。
翔真が若干面倒臭そうにタバコを灰皿に揉み消し、エグゼクティブチェアから腰を上げる。
ドアに鍵かけたの、自分なのにな?
「今開ける」
翔真の声がするまで叩かれ続けるドアに、溜息混じりの返事をして、カチャンと鍵を解除する。
するとそれを待っていたかのようにドアがバーンと開いて、
「もお、支配人ったらいつまでもアタシにこんな重い物持たせる気?」
ついさっきまで静寂だけで満ちていた支配人室に、賑やかな声が響いた。
つか、ンな重たくもねぇだろうが……
「悪かったな。ご苦労さん」
「ふふ、どういたしまして♪ それより、智樹の具合はどうなの? 熱があるって聞いたけど……」
へぇ、一応心配してくれてるんだ?
「大したことはないよ。少し休めば良くなる筈だ」
「そうなの? ああ、でも心配だわ……。もし困ったことがあったら、遠慮なく言って頂戴ね? アタシ、病人のお世話は出来ないけど、支配人のお世話は出来るから♡」
なんだ、結局はそこかよ……
一瞬でも“良い奴”だなんて思って損したぜ……
「あ、ああ、その時は…な」
顔なんて見なくたって分かる、翔真の奴、絶対困った顔してる(笑)
翔真のジャケットに包まった俺は、口元を手で抑え肩を揺らした。
そこへ、
「笑ってんじゃねぇ……」
圭の配あしらいを終えた翔真が、メイク落としのパックを投げて寄越した。
「痛って……。俺、これでも病人なんだけど?」
「うっせー、さっさとメイク落とせ。じゃないと……」
ジャケットの裾から伸びた内腿を、翔真の手がスルリと撫で上げ、
「あっ……はっ……」
「いつまでもこのままだぞ? いいのか?」
甘い息を漏らした俺の耳元に、悪魔のような囁きを投げつけた。
くそっ、さっきまでの善人面はどこ行ったよ……
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