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それから毎週、木曜日の夕方に七瀬さんと会うようになった。
といっても約束をしたわけではなく、俺がいつもその時間に来ていることをシュウさんから聞き出したらしい彼が、それに合わせてくるようになった。らしい。
何度か会ううちにいくつか知ったことがある。七瀬さんのお気に入りはブレンドコーヒーのブラックと日替わりのサンドイッチで、話すときに視線を合わせてくる瞳は俺よりも色が薄いこと。実は第一印象ほどチャラくはないこと。
全くとは言わないけど。
ちなみに初めて会った日は緊張していたけど(ビビってはいない、断じて)、次に会ったときに一人称が俺なのはバレている。「仲良くなりたいから楽に話して」だそうだ。チャラい。
「ナンパしてるんです」と言っていたのはあながち嘘でもないのかもしれない。
今日はその木曜日。
いつものように窓際の席で本を読む。七瀬さんと初めてあった頃に読み始めた本はもう終盤にきていた。買うときについ視界に入ってしまった帯の「大どんでん返し!衝撃の結末!!」の文字が気になって、今か今かと構えながら気づいたら読み終えていた。
本当に最後まで怒涛の展開だったな。興奮がすごい。語彙力がやばい。
これはお気に入り棚に追加確定だな。
ふとスマホで時間を確認すると時刻は18時すぎ。いつもならとっくに七瀬さんが来てどうでもいい会話に花を咲かせているころだ。
今日は会えないのかな。
いやいやいや、仕事が忙しいのかもしれないし、今日は気分じゃないのかもしれない。そもそも会う約束すらしてないんだから。
それでも毎週会っていて今日も会えるんだと思っていただけになんとなく寂しくなる。
会えなくてもシュウさんのホットケーキは相変わらずふわふわだし、カフェオレもおいしいんだけど。若干の物足りなさを感じながら帰路についた。自分で会計を済ませたのが七瀬さんと出会ってから初めてだということには、店を出てから気づいた。
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