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うる、としたまま子犬を優しく撫で始めた真慕に表情が緩む
「真慕と一緒に暮らすようになって、本当に嬉しかったんだ」
先程の話の続きをしても良いだろうか
短く言葉を落として様子を見ると、聞いてくれるようで、その場にちょん。と体育座りをしている
俺も足を崩して座ると、何を思ったのか俺の足に先程まで抱っこしていた子犬のぬいぐるみをそっと置いてきた
子犬のぬいぐるみはあどけない目をしていて、思わず力が抜ける
このほんわりと緩くて時間がゆっくりと穏やかに流れる感覚は紛れもなく真慕が放つ空気そのもので、俺が好きな真慕との時間だ
「『じゃあ俺と結婚して』なんて引かれても仕方ないような条件出して結婚してもらったの覚えてる?
本当はもっと色んな告白の仕方があったんだろうけど、今を逃したらまた真慕は目の前からいなくなっちゃうと思ったら余裕なんてなかった
だから時々不安にもなった。
自分で言っておいてなんだよって思うよね
でも、そんな風に告白したからその内大嫌い、なんて言われてしまったらどうしようとか。
だから真慕が俺の事好きだって言ってくれた時嬉しかった
色んな嬉しいが一気に溢れてきて堪らなくなった」
膝の上に乗せられた子犬の頭をこしょ、と薬指で一撫すると真慕は嬉しそうに少し目を細めた
「…可哀想だから一緒にいるんじゃないよ。
なんて言ったら伝わるかな。改めると照れるけど、好きだから。とにかく真慕が好きだから一緒にいたい
真慕がいてくれるだけで嬉しくて幸せで堪らなくなるんだ
子供っぽくてごめん
でも、じゃないと結婚してなんて言わない。」
膝の上に乗せてくれた子犬をそっと抱き上げてテーブルの上に置く
傍で体育座りしている真慕を抱き寄せた
仕事から帰ってきて真慕がソファでクッションを抱きしめながら眠っていたとき。
簡単に出来る3分料理、なんてテレビでやっているとき実は小さくメモをとってるよね。
洗濯物もたまに畳んでくれていたりする。
嬉しいと案外直ぐに顔に出る。
それから、お気に入りの趣味部屋でにこにこしているとき。
頑張りたいのに空回りして泣いているとき。
寝言で俺の名前を呼んでくれたり
一緒にご飯を食べたり
お風呂に入ったり
おかえり。って帰りを待っていてくれたり。
「すき」そう寝室で小さな声で教えてくれた時のこと。
お店の人の前で食べたいものを頑張って伝えている時。
ありがとう、って笑う顔。
緩やかに、でも止まらない真慕との日々が思い出された
「…なに」
ふんわりと香るシャンプーと石鹸の匂い
ぴく、と反応はしてもさほど抵抗はされなかった
「どうしよう、好きが溢れてきた」
ひたすらに好きだ
目の前のこの人が。
俺の世界に色んなものをくれる優しくて可愛くて、本当は甘えたなこの子のこと。
俺のことを好きだと言ってくれた時のことを思い出したら胸が詰まって痛い
「………し、したいの。」
赤い顔をして、じっ。と見上げられる
あぁ、もう真慕。可愛い顔しないで。
「葵…?」
いいのだろうか。
真慕を思えばこのまま抱きしめて眠るのが得策だと分かる
でも、今の真慕はそこまで脅えているようには見えなくて、照れたような緊張しているような、今まで見た事のない、誰にも見せたくない顔をしていた
「── うん。触らせて」
腹を決めて、そんなお願いをした
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