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普段の生活では、まず耳にしない言葉「チンチクリン」。
「寸足らず」と言った意味合いがあるが、歩的には「珍妙な返事をするヤツめ!」といったところを指している。
はあ?
はあ?
ぼくは、ぼくのものですぅ?
さっぱり分からない。
鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス!!
忍の顎を掴むと、グイッと上向かせた。
「お前は俺の!俺はお前のモノだ!!」
ブチュウとキスをかました。
不動産屋のおじさんは、おやおや。と思った。
相変わらず新里さんは、忍ちゃんのことになると必死になる。
目の前の間男くんへの牽制だろうが、なかなか情熱的な愛情表現に、ニヤニヤが止まらなかった。
なにしろ、世界中の不幸を背負ったような顔をしていた忍ちゃんを笑顔にさせた人物だ。
一目も二目も置いている。
「間男さん、諦めた方がいい。忍ちゃんは、とっくに彼のモノだよ。」
そう言って、間男、つまり大久保の肩に手を置いた。
間男と呼ばれた大久保は、呆然として顔を上げた。
「・・・お、おく・・・!」
目の前で、キス?!
状況が理解出来ずに、呼吸が止まった。
待て待て待て!
三世帯って、新里さんと?!
確かに恋人候補とは言っていたけど、この子は彼のことが嫌いじゃないのか?!
冷静になって考えろ。
好きであれば、彼が自分のモノだといえば、肯定するだろう。
だけど、本当は新里さんの好意が迷惑で、ストーカーに遭っているのだとしたら、どうする?!
三世帯というのは、お義父さんお義母さん、すみれとわたし、忍とまだ見ぬ女性との間の話であれば、新里さんはただの独り相撲だ。
忍に気持ちが無いのであれば、そこは救ってあげる必要があるんじゃないのか?!
父親として、なにもしてあげれなかった負い目がある。
大久保は大きく息を吸い込むと、歩が握るモップを奪い取った。
「!!!」
急に立ち上がった大久保に、6つの瞳が集中した。
「息子から、離れろーーーッ!!」
「うぉ?!」
そうして、しっとりと濡れたモップの雑巾部分が、歩の顔にブチ当てられたのだった。
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