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小夜の目の前で、何かが動き飛んでいく。
小夜はあんぐりと開けた口を両手で塞いだ後、声にならない悲鳴をあげた。
小夜の目には全てがスローモーションで見えた。
入り口の風見さんは、小さいおじいちゃんの腕を掴んで拘束した。その反動でおじいちゃんが握っていた焼酎の紙パックが飛んでいき、高く宙を舞っていく。
扉から飛び込んできた新里さんは大久保先生の元へ走り出し、大久保先生と忍さんは抱き合ったまま目を丸くした。
小さいおばあちゃんたちも店に入ってきて、風見さんの腰に取り付いた。
コマ送りで世界が動く。
いけない!
新里さんを止めなきゃ!!
動かない足を使って、床を蹴った。
このままじゃ、大久保先生が殴られちゃう!!
敵対する感情を持った人に、いくら部外者が説明しても理解してもらえない。
いまの新里さんには、言葉は無意味なのだ。
宙を飛んだ紙パックは、大きな円弧を描いていく。
風見さんの顔は、失敗に大きく歪んでいた。
「キャーーーーッ!」
新里さんの、振り上げた拳。
憎しみの炎に焼けた目は、大久保先生を睨みつけている。
だめ!
だめなの!!
お願いッ
「やめてぇ!!」
小夜は力一杯、床を蹴った。
小夜の伸ばした手が、新里のベルトに掛かった。
忍さんの目が大きく開かれていく。
風見さんに取り付いた小さなおばあちゃんが、その背中にうっとりと頬を寄せていた。
もう一人の小さなおじいちゃんが、風見さんの肩に飛びかかった。
ああ、・・・すべてがゆっくりと動いていく。
ああ、ああ・・・!
再来ッ!
「うわっ?!」
小夜の勢いは止まらない。
両手は、ベルトを掴んでいた。
重力と勢い。
その力のままに、小夜は地面へと落ちていく。
ああ、・・・ごめんなさい!!
謝っても、力には逆らえない。
地面に近づくということは、両手のズボンも地面に近づくということ。
新里さんもバランスを崩して倒れていく。
全てはストップモーション。
ああ、ああ!
ごめんなさい!!
裸の足が小夜の鼻先に迫った。
「・・・ぶひっ!」
「ギャーーーーー!!」
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