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師匠との出会い4
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やっぱ面倒臭いことをしたな、と蘇芳は思った。
あのあと適当な宿を取り(小汚い荷物に一瞬嫌な顔をされたが、宿代を多く積めば問題なかった)、丁稚に小遣いをやって子供服の調達に行かせ、風呂で小汚い身体をがしがしと洗った。その間も子供はピクリともせず気を失ったままで、結局目を覚ましたのは、新しい服を着せて布団に突っ込んでから暫く経ったあとだった。
そこまでは、何の滞りもなく進んでいたのだ。だが、そこからが問題だった。
目覚めた子供は、自分が置かれている状況に酷く混乱し、引き攣った悲鳴を上げたかと思うと逃げ出そうとしたのだ。
その首根っこを捕らえることは容易だったが、子供が暴れようとしたため、不本意ながら低い声で、逃げるな、と脅す羽目になってしまった。これでは人攫いだ。命の恩人だというのに。
取り敢えず大人しくなったのはいいが、子供はすっかり蘇芳に怯えて縮こまってしまった。
(……腹に食い物突っ込めば少しはマシになるか?)
風呂に入れるためひん剥いた服の下には、大量の傷跡で覆われた身体が隠されていた。傷跡には、打撲、火傷、切り傷などが多く、それらは新しいものから古いものまで様々であった。また、身体自体もやせ細った不健康そのもので、まともな食事とは程遠い生活をしてきたのだろうことが察せられた。
手負いの小動物を拾ったようだ、と思いながら、蘇芳は何か消化に良い物を作ってもらおうと部屋を出た。一瞬、自分が部屋を空けている間に逃げやしないかと思いはしたが、あの子供にそれを実行できるほどの余力はないだろう。それに、陽が落ちた外では雪が降り始めている。よほどの馬鹿でもない限り、今この宿を出るのが自殺行為であることくらいは判る筈だ。
そう考えて厨房で粥と酒のつまみを調達してきた蘇芳は、部屋に戻って眉を顰めた。
子供がいなかった訳ではない。いるにはいるが、“別物だから”不審に思ったのだ。
卓上に粥とつまみを置き、蘇芳はつかつかと子供に近寄って、真正面からその顔を覗き込んだ。びくりと肩を跳ねさせて怯えを露わにした子供に対し、蘇芳は数度瞬きをした後、にやりと笑って見せた。
「なんだ。よく判らないが、さっきの餓鬼よりは幾分話が通じそうじゃあないか」
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