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師匠との出会い5
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「……な、なに……?」
怯えの中に戸惑いを滲ませた少年に対し、蘇芳が笑みを深める。
「雰囲気も違うが、特に目が違う。お前はアタシを警戒していても、怯えてはいない。お前の怯えはさっきの餓鬼と違って、表面上繕ったものに過ぎない」
途端、子供の表情が引き攣り、強張る。それを見て、蘇芳はやはりと思った。
一見すると同じように見えるこの少年は、しかし蘇芳が部屋を出る前とは異なる何かだ。蘇芳の前のこれは、怯えて震えることしかできない小動物ではなく、手負いながらも油断を見せたら喉を食い破ってやろうとでも言いたげな肉食動物だ。
どういう理屈なのか、蘇芳にはさっぱり判らない。けれどどうやらこの子供は、中に“二人”いるらしい。
表面の怯えはそのままに、黒い瞳の奥に宿っている警戒の色が濃くなったのを認めて、蘇芳はやれやれと首を横に振った。
「アタシは仮にも命の恩人だぞ。もう少し礼節を持った対応したって罰は当たらないと思うが?」
「……」
「ま、話さえできればいいさ。……ほら」
いったん子供から離れ、卓に置いた粥を盆ごと子供へと差し出す。食え、という意図だったのだがしかし、面喰らったように目を見開いた子供は粥をじっと見るばかりで受け取ろうとしない。その様子に面倒臭そうな顔をした蘇芳は、殆ど子供の胸に押し付けるようにしてぐっと盆を突き出した。
盆に胸を押された子供は、物言いたげな目を蘇芳へ向けてくる。何がしたいのかと問いたいようでもあり、施されてたまるかと言いたいようでもあった。
そんな様を、蘇芳は鼻で笑う。
「今の状態で他人の施し拒絶できる余裕があるたぁ驚きだな。死にたいんなら話は別だが、どうなんだ? まぁ、お前のその自尊心が命より重いってぇんなら余計なことか。謝ってやるよ」
そう言いながら盆のふちで何度か胸を小突いていると、子供はようやく盆を受け取った。と言っても、食べる意思の下受け取ったというより、小突かれるのを止めるために奪い取ったと言った方が正しいようだ。
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