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師匠との出会い8
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正直、理由がそんなにも重要なものなのかというところから理解できない。理由はどうあれ、あとは朽ちるだけの命を幸運にも掬われたと、ただそれだけがそんなにも納得のいかないものなのだろうか。とにかく、やたら細かいことを気にする餓鬼だなぁ、と蘇芳は思った。
また噛みついてきそうな様子の子供を手で制し、仕方ないなと片眉を上げる。
「そんなに酒を理由にするのが気に食わないんなら、じゃああれだ、料理とかも教えてやるから色々やれ。その代わりに衣食住やらを提供する。それでいいだろ、面倒臭い。それとも他に生きる道が現状のお前にあるのか? 無いだろ? だからこれでこの話はお仕舞いだ」
本当に心底から面倒臭いという顔で話を終わらせれば、子供は何とも言えない表情をして、はぁと小さく息を吐いた。そして俯き目を閉じて黙っていたかと思うと、暫くしてから顔を上げ、小さな声でぼそりと呟いた。
「グレイ」
「あん?」
「オレは、あまがや、グレイ。さっきのはきょうや。他にあとまだいる。アレクサンドラと、じん、……ちよう」
「…………あー、取り敢えずお前がまとめ役ってぇことで良いか?」
こくりと子供が頷いた。言わないまでも、存外面倒臭い感じだな、と蘇芳は思った。最初に見たのと今見ているのと、それ以外にもまだ三人、合計で五人もこの体の中に人格が共存しているらしい。
それから子供は、まだ警戒が抜けきらないまでも、これから世話になるのならと“天ヶ谷ちよう”という存在について語り出した。各人格の存在理由と、死にかけで道端に転がるまでの経緯。親の虐待は想像していても、まさか母親を殺してきたとまでは思っていなかった蘇芳はそのくだりで流石に驚いたが、大人しく最後まで聞いていた。
「いちおう、表に出てるべきなのはきょうやだから、あとでオレは引っこんできょうやにかわる。アレクサンドラが、オレが聞いたことをいいようにすりこんでるから、さっきみたいにはこわがらないはずだ。まったくこわがらないのはムリだろうけど」
そう言いつつじとりとした目を向けてきたのは、“きょうや”とかいう最初の子供を蘇芳が脅したのを思い返したからか。とはいえ蘇芳はするべきことをしただけだと思っているので、どんな目を向けられたところで悪びれるつもりは欠片もなかった。
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