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──本っ当、最悪……。
何の考えも浮かばないまま、汐は真上を見上げた。
星の一つも見えず、どんよりと湿気った空気が全身を重怠く包んでいる。
これで終わってしまった。創一の前では、無邪気で可愛い子供を演じていたのに。
テレビの中と同じ、天使 汐という人物を。
──もう、疲れた。何もかも。
深見にも振り向いてもらえない。
芸能界からも逃げ出して、もう自分の中には何にも残っていない。
輝いていた頃は、今みたいな平凡に憧れていたはずなのに。
今日は天気にも裏切られる。
ぽつぽつと降り出した雨はやむ気配もなく、地面を打っては跳ね返るほどに強かった。
雨に濡れていたい。でも、通りかかった人の視線が煩わしくて、結局、ドーム型の遊具へ身を屈ませて入った。
暗いし、土と埃の混ざったような匂いがする。
不衛生な地面の上へ寝そべることは出来ずに、汐は立てた膝に顎をのせる。
今からでも駅のほうへ戻るべきだろうか。
そんな考えが頭をよぎったが、また身体を濡らすのも億劫だった。
梅雨の時期は気温も不安定だ。
外気はひんやりとしていて、濡れた身体からさらに体温を奪った。
「さむ……」
ぶるっと震わせて、汐は一人薄暗い遊具の中で小さくなる。
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