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保留にもしないまま、紗那が自分のスマートフォンを手渡してくる。
後ろめたい気持ちがあり、心底電話には出たくなかった。
「……もしもし」
『汐くん!? ……ああ、よかった。本当に……よかった』
スピーカー越しの声が、震えている。
沈黙が降りた途端、向こうから雑音が届いた。
──なんだ。仕事に行ってるんだ。
あの後、汐の鞄を持って帰って、普通に電車に乗って、帰宅して。
汐がどこかに行ったと話したら、紗那が大袈裟に解釈したのだろう。
「体調は?」「怪我は?」と質問責めにあい、汐は単調に「うん」と答える。
汐が疲れているだろうと気付いたらしく、創一は電話を切った。
「汐が家出したって言って。一晩中……汐のことを探していたのよ。お昼までに帰って来なかったら、警察に捜索願を出すところだった」
「……え? 仕事に行ってるんじゃないの」
警察、と言われて、汐は怖気づく。
まさかそんなに大事になっているとは思っていなかったからだ。
「携帯も鍵も財布も、全部置いていったでしょう。だから、すぐに戻って来ると思っていたらしいの。お父さん、全部自分が悪い、って言っていたけれど……汐も大人でしょう。家出なんかして」
「ごめんなさい」
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