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サナギ
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季節は秋。
あっという間の、10月中旬。
夏休みを開けても、衛と昼休みには教室に現れ、一緒に過ごしてる。
そのうち、昼休みだけでなく放課後も現れるようになった。
昼休みは毎回場所を変えて、放課後は僕の行くところについて来たり、僕を連れ回したりする。
最近では女子生徒から声を掛けられても、「揚羽と約束してるから」と断るようになった。
約束なんてしてないのに。
「学校祭。揚羽んとこは何やるの?」
「え、ああ、劇です。『美女と野獣』っぽいのです」
「何だそれ?」
「野獣になったお姫様がはちゃめちゃに暴れて、その内、王子の愛で人間に戻るんです。野獣は男子がやりますけど」
「変な話……でも、なんか面白そうだな。で、揚羽は何役?」
「僕は裏方です。背景作りです」
衛は科学室の作業台に乗せた手に頭を乗せ「はあ?」と、面白くなさそうな顔をした。
「揚羽が姫役やればいいじゃん」
「嫌ですよ。……って、なんで姫なんですか?」
「絶対似合うと思うけどな」
「イ・ヤ・です」
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
放課後、ジャージに着替えてベニヤ板に書かれた森の下書きにペタペタと色付けをする。
その脇で、女子が楽しそうに衣装を手直している。
衣装は演劇部からの借り物だが、ほつれが酷いらしく、文句を言いながらも楽しそうに手を動かしていた。
「ねぇ、サナギくん」
背後から声を掛けられて振り返ると、衣装を手にした女子が背後に立っていた。
「これ、着てくれないかな?直し部分を確認したいんだ」
姫役のドレスを差し出される。
「な、なんで?」
「だって、姫役の背格好に一番近いのサナギくんだから。ねっ、お願い!」
手を合わされて必死にお願いされて、渋々、ドレスを受け取った。
物陰で、ジャージの上を脱いでTシャツの上からドレスに袖を通す。
ツルツルの布だけど、縫製はちゃんとしているようだった。
「わっ、本当にサイズピッタリだ」
「胸に詰め物入れたら、代役できるね!」
めちゃくちゃ笑顔の女子たちに、ドレス姿の僕は囲まれた。
「サナギくん、着た時、おかしなとこなかった?」
「あ、えっと、ファスナーのとこ、少し動きが悪かったかな」
「え、何処どこ?」
「サナギくん、下履いてるよね?スカート捲るね」
「ええっ!」
「大丈夫、大丈夫。私、お兄ちゃんと弟いてこういうの慣れてるから」
それから30分ほど、女子に衣装をあちこち捲られまくった。
確認作業が終わりぐったりする僕に、笑顔の女子が言った。
「姫役に何かあったら、代わりに出てね」
冗談……だよね……?
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