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あの日、俺達のチームは解散した。
いや本当はもっと前それこそ3ヶ月前。琳の様子があからさまにおかしくなった時から段々と人は減っていた。
人たらしのクセしてクズなあいつはそれでも有り余るカリスマ性で行き場のない俺達の道標だった。
こいつに着いていけばいい。こいつの言う通りにすれば全て上手くいく。今まで俺たちを馬鹿にしてきた奴らを見返してやれる。
けれどあいつは腑抜けた。
恋をして、あいつはあの神々しいまでに輝いていたカリスマ性を何処かに落としてきた。
後にはただのクズだけが残った。
そしてあいつが連れてきたコイビトだという奴は俺達が最も嫌う人生そこまで苦労したことのないイイコちゃんだった。
それこそ風俗にでも流されていれば俺達も一応受け入れられたかも知れない。ただこいつはそれを逃れたのだ。
犠牲の上に。
喧嘩するために集まってるチームなのに喧嘩は駄目だ、と説教をたれる。
未成年なのに煙草は駄目だ、酒は駄目だ、なんてイイコちゃんを発揮する。
頭湧いてんのかと思った。
それなのに琳は喧嘩を辞めた。酒と煙草は流石に止めれなかったらしいがそれでもそいつの前ではやらなかった。
喧嘩に費やしていた日数そいつとデートに行き、女を抱いていた日数そいつを抱いた。
次第にチームから人は減った。
何人か残ったヤツもただある人物の帰りを待っていただけだった。
俺達の仲間の優杏の帰りを。
あいつは出会った頃こそ優等生のイイコちゃんだったが俺達と同等、それ以上の苦労をしていたし何より必死に琳を慕う姿が好感を持てた。
それでも中々仲間として接することが出来ず嘲笑うようにからかうことしか出来なかった。
何度も頼み込んで初めてデートしてくれたんだ、と。水族館に連れて行ってくれたんだ、と。そこでお揃いのキーホルダーを買ったのだと幸せそうに笑うあいつを見ていた。毎日毎日飽きもせずスマホに付けたキーホルダーを眺めては琳がどこにもキーホルダーを付けていないことに1人落ち込んでいた。
何度も何度も頼み込んでやっと抱いて貰ったと恥ずかしそうに自慢してきた。それが女を抱き潰さないために絶倫の琳が吐き出しきれなかった精を吐き出すための行為で愛がないと分かっていただろうに心底嬉しそうにしていた。
あいつが何年もかけて何十万も貢ぎ、何度も頼み込んで得た物たちを断りつつも甘受するそいつが腹立たしかった。優杏があまりにも可哀想だった。
愛する琳に他の男に抱かれてこいと言われたのにやっと琳くんに会えると嬉しそうにアジトに来た優杏が憐れで仕方なかった。
優杏が別れを告げ走り出したあと呼び止めはしたが追いかけれなかった。追いかけてあいつになんて言えばいい。今あいつになんて言っても全て優杏を傷つける刃になりそうで恐ろしかった。何度も喧嘩して相手を病院送りにしてきた俺達誰もがあいつを傷つけるのが怖くて追いかけることが出来なかった。
琳とあいつはその後何か言い争っていたが別れることはなかったらしい。
俺たちはそれを見て琳から離れることを決意した。
路地を抜けた所にあいつがずっと大事にしていたキーホルダーの付いたスマホが投げ捨てられているのを見つけて胸がとても苦しくなった。
あいつはやり方は間違えてたけど全力で琳が好きだったのにな。
なんで琳は分かってやらなかったんだろうな。
お前ほど琳を慕っていた奴なんて後にも先にもいないのにな。
なぁ、もうきっと会えないんだろう。お前は俺達と会う気なんてないのだろう。
だけどこれだけは言っておく。
俺はお前のその全力で琳を追いかけていた姿中々好きだった。お前には面と向かって最後まで言わなかったけど俺たち全員お前のこと結構好きでずっと前から仲間だと思ってたからな。
琳に全力だったお前が少しでも俺達との思い出を覚えていてくれることを願う。
もしまたどこかで会ってもお前は気づかないフリをするだろうから俺もそうしておいてやる。
どうかお前が誠実な人を好きになり全力で愛した分だけ返してもらえるような幸せな恋が出来ますように。
仕方ねぇから祈っておいてやるよ。
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