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逢瀬3
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高橋は手にしたサイダーをテーブルに置き、ポケットに入っている薬の包みをふたつを取り出して、並べるように隣に置いた。
(美麗な青年のはじめてを悦いものにするには、安定剤と催淫剤のどちらが有効だろうか――)
これまでのネットでのやり取りと、直接顔を突き合わせてからのやり取りをしばし考慮した結果、高橋が選んだものは安定剤だった。ホテルに着いてからの緊張の具合や彼の心を支配しているであろう、後悔の念を取り去るのに、安定剤がよく効くだろうと思った。
テーブルの上に設置されている、透明の小さなガラスのコップを掴み、サイダーのペットボトルを開けると、三分の一だけ中身を注ぐ。間髪入れずに安定剤の粉薬を投入すると、炭酸が一気に弾けて泡立った。
コップの中身が落ち着くまで、数秒間そのままにしてから、八分目までゆっくりと注いだ。ほどなくしてシャワーの水音がぴたりと止んだのを察知し、椅子から立ち上がって、着ていた服を次々と脱いでいく。
座っていた椅子に衣類を適当に置いてベッドに腰かけ、何事もなかったように見せかけると、バスローブを身に着けた青年が、恐るおそる風呂場から顔を覗かせる。
「やっと出てきた。随分と念入りに洗ったんだね」
ベッドから腰を上げた自分の裸体を目の当たりにしたせいか、頬を染めて視線を彷徨わせる姿に高橋は吹き出しかけつつも、青年を宥めるように声をかける。
「テーブルに、冷たいサイダーを用意しておいた。それ飲んで待っていて」
すれ違いざまに青年の頬にキスを落とし、バスのある扉の中に姿を消す。何も考えずに薬入りのサイダーを口にしますようにと祈りながら、シャワーを浴びたのだった。
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