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椿(2)
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ウキウキした気持ちで肉を取りにバックヤードへ行くと、麦さんがいた。
「上手くやってんじゃん、誠。」と麦さんは言った。その視線が、なんだか怖い。
「早く結婚しちゃいなよ。相手は本気っぽいんだし。」
麦さんの声は、いい物件をすすめる不動産屋みたいな調子だった。
「でも、まだ、わからないです。いつ捨てられるか、わからないし。」
俺は、思ったままを言う。
「だろうね。そんな態度じゃ、いずれ捨てられるかも」はっきりと、麦さんはそう言った。
「若いうちだけだよ、チヤホヤされるのなんて。僕は、それがわかってたから、結婚した。親の憐れむ目に負けないように、裕福なαと。」
だから、と麦さんが言う。
「貞操になんて価値はない。尽くして、尽くしまくって、もうこいつでいいやと思わせて。早く結婚しちゃいなよ。」
麦さんは、抑えていた暗い感情を吐き出すようにそう言った。
俺は、なんだか、幸せな気分が吹っ飛んでしまった。
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