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「…………でもビルから花火は見えたな」
「探偵事務所の?」
「うん」
「そのビルってまだある?」
「もう潰れてるよ」
「なんだ。残念」
倫太郎に昔のことを話すとき、不思議な感覚に襲われる。まるで全ては過去ではなく現在も進行形であるかのような、今だけがたまたま、仕事がなくて、罫も席を外しているだけの、そんな妙な気分にとらわれるのだ。
「……百貨店の屋上からも見た」
「そうなの?」
「丁度事件を解決したタイミングでね」
「あ、それ、読んだ。怪人初登場のやつでしょ」
「そうだっけ」
「そうだよ。怪人がぴゅーんっていなくなったと思ったら花火がばーんって打ち上がってってやつだよ」
「ああ、そう、それだ」
「捕まえ損ねたの、悔しかった?」
「呆気にとられてた」
「んふふ」
何故か勝ち誇って、倫太郎は笑う。
「罫も固まってたなあ」
「ふふふー。ね、ね、礼介くん」
「うん」
「やっぱり一番手強かった? 怪人」
「そうだねえ」
「ちゃんと敵だったもんね」
「そうだね」
「でも最後は捕まえたんでしょ?」
「……………………」
どうなるんだっけ。罫の小説は読み返してない。
現実と小説は違う。
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