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…………あれ?
目解家は人に優しく、じゃなかったっけ? まさか本当に秒でバレたのかと、置いてけぼりにされた応接間で一人頭をかきむしる。んじゃあ、もう、いいや。かしこまってたけど服をひるがえして、お気に入りの柄模様にチェンジ。さてさて、どうしようかな。
その後再び彼は現れて、おれはおれを演じる。変におとなしいキャラにしなくてよかった。小説、やっぱ嘘じゃん。そう叫びたくなるほど彼は全然名探偵じゃなくて、それどころか人間ですらなくて、死にかけの切り干し大根みたい。ライフポイント残り小数点切ってそうな感じ。おれを遠ざけようとしてる。そうはいくか。失神してぶっ倒れそうな大人を抱きしめる。細い。体温を感じない。おれのが熱いから。怯えて、悲しんで、痛んでいる。誰が彼をこんなにしたのか。床にねっころがしてのしかかる。気付きたくなかったけどまあ普通に気付くよね。左手の薬指に光る。初めて見る見慣れた指輪。お母さん。お母さん。お母さん。
「結婚してるとは本に書いてなかったけど、」
おれはその現実に触れる。
「誰を愛してたの? 名探偵さん」
答えろよ。答えてくれ。聞きたくない。違うって言ってほしい。
やめてくれと、震える声で、小さく懇願する彼をみおろした。なんだか、この人の幸せを全部吸いとっておれはこの世に生まれてきた。そんな気がした。ああこの人にとって、今この世界が際限のない地獄なんだ。おれはこの人を苦しめるために生まれたのかな。それとも、……………まさかね、救うため?
お母さん。
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