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「あ、あのときの人だ。」
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「あ、あのときの人だ。」
トイレから出て自販機で二人分の飲み物を買おうと思って比較的平和な廊下を歩いていたら不意に声をかけられて、なんだか憂鬱だなって思ってしまった。
別に人見知りというわけでもないけど、人と話すのは正直得意ではなかったりする。
誰だよ、めんどくさいな、という心情のままに一旦、話だけは聞いてやろうか。と謎に上から目線で目の前に立つ男性に意識を向けた。
声にならない声をここ最近で初めて発したかも知れない。
そして俺も
あぁ、あんときの人だぁ。ってなった。
なんか今日、よく人に会うなあ
ちな、あん時の人とはひさの結婚式でブーケトスを手にしていたあのイケメンである。
イケメンというかどちらかと言えば美男子?
「へぇぇー、何?近所なの?みんな友達?」
当然のようにさっきまで会話をしていたテンションで口に出てしまっていた。俺の癖が出てしまったか。
すぐに我に返って謝り倒したてたら、俺のことやっぱり覚えてないよね。って突然言われた。
この人も人の話聞かないタイプかと俺と近いものを感じた。
「覚えてますよ。結婚式で見かけました。」
俺はあの時の幻想的な光景を思い出して、やっぱり綺麗だと思った。
そっか!良かったです。つって喜んでくれるんだと思ってた俺は、それより前にあってるんだよね、実は。て少し残念そうに肩を落とす美男子にそういう感じ?と素直に落胆してしまった。
少し考えても結婚式以外にあった覚えがないのでひとこと断りを入れてからいつですか?と尋ねた。
「ほら集団で拉致られた時のこと覚えてない?」
ああ、噂をすればってやつですか。ああそうですか。
ついさっき、病室で山田 誠と話をしていた例のあれだ。
小学3年の時に悪い人に連れ去られたことがあった。
その時、俺と一緒に居たもう一人の子だと思い出した。
じゃ、何。この子、俺と同い年なわけ?
全然大人っぽく見えるわ。ホストとかで働いてそう。
「よく俺だって分かったね。」
「あの時『パンツォーレ』って言ってたから。すぐに気づいた。」
え、何?
俺昔からそんなこと言ってたの?痛っい奴だな〜。
俺より背も低かったし、俺よりもずっと可愛らしいかったのに今や……こんな美人さんになっちゃって。
時の早さを実感してるよ。
あ、でも身長はまだ俺の方が高いのかな?
あの時はありがとう。
美男子は俺の目を見て感謝の言葉を述べた。
俺は何も返さなかった。
お礼を言われるようなことは何もしていない。
ただずっと隣で啜り泣くこの子に気晴らしになるような話をしてあげただけで……本当に何もなかった。
「元気にしてた?美人になったね?」
何も返さない代わりに世間話に切りかえた。
よく見れば俺と同じ制服を着ていた。
同じ学校だったんだ。見たことないけどなあ。
なんて呑気に考え事をしてたら元気にしてたよ。って美人かどうかは分からないけどね。って困った様に笑われた。
それで少しの間を置いてもしかして入院してるの?って物凄く心配そうに聞かれた。
まぁ少し、でもそのうち退院するから大したことないかも。と俺が答えた後に気づいた。
おめぇも現在地病院じゃん。って。何してんの?って病院で世間話をしてる自分たちがちょっとアホだと思った。
「そう言えばどこか悪いの?」
俺、癌だけど。それより悪いわけないよね?ってそれ前提で悪気なく聞いてみた。
「んーん。お見舞いに。」
俺のお母さんがあんまり調子良くないみたいで。
少し悲しげな表情をしているように思えたが、他人が踏み込んでいい領域じゃないと判断してそっか。と返した。
「俺、人待たせてるから行くわ。お大事に。」
それから俺は何を思ったのか、特にこれ以上話すことないなって何故か判断して会話を終わらせる方に急転換させてた。
そう言えば俺、トイレ行くって出ていったよな。
絶対大便してると思われてる。あのタイミングで大便しに行くんだあいつって思われてる。うわ恥ず。
どうやって弁明しようか。
弁明………大便、弁明、 なんかいい感じに韻踏んでて草。
ちょっとご機嫌で前を通り過ぎようとしたところで腕を掴まれて引き止められた。
やっぱり俺の方が身長高い。しかも3〜4cmは差があるんじゃないかな?ってちょっと目を上下に動かした。
「待って。急いでるのにごめん、今度ゆっくり話したいなって思って、、、連絡先とか交換できたりする?」
あ、話すんだ。
そりゃそうだよね。お互い酷い目にあってね、ちょっと運命感じる出会い方してね、それでもう会わないだろうとか思っちゃうのは違うよね。
えぇ〜ごめんね。
自分でもこんな薄情な人間だとは思わなかったわ。
うわ、、、ショック。自分の人格がクズすぎでショック死してまうわ。
「ごめん今小銭しか持ってないの。でも同じ学校だから会えると思うけど…その時でいい?」
ポケットを探る仕草を見せる美男子を横目に俺もスマホ…と思ったけどポケットの中には小銭入れしかないことに気づいて、取りに行くのも面倒だし、待たせるのも可哀想だと思って次回会えることを期待して今回は断ることしにした。
え、仲良くしよ。この子には優しく接してこ。
「同じ学校?えっ!!?そうなの!!何組?」
俺と同じ反応。やっぱ親近感覚えるわ。
そうだよね。俺たち会ったことないよね。どこいたの君?
ものすごく嬉しそうに目をキラキラさせてハイタッチなんかしてきて可愛いやつだなって思った。
「5組」
5組かぁ、それじゃ棟が違うから合わないね。俺1組だから。ってテンションが急降下して残念そうに肩を落とした。
ああそっか。
そりゃ合わないね。って俺も眉を八の字にした。
同じ学校って知ってたら毎回ジュース奢ってやったのに。
あ、かわいい。こいつかわいいな。ほんと可愛いな。
今度教室行くね。って今日一の笑顔で言われてジュース奢ってやろって思った。なんなら好きな物なんでも買ってやろうって思った。
お、待ってるわ。じゃね。ってものすごく淡白な会話をして別れた。
何事も無さそうで本当に良かったよ。
本当に良かった。
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