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コートも羽織らずに飛び出して行った零を追いかける。
違うんだ、こんなつもりじゃなかった。
ただ少し距離を置きたかっただけだ。
正しい距離を保てるように。
店長に連絡して、迎えにきてもらって、数日零を預かってもらおうって、そう思ってただけなのに。
「零!零、どこだ…っ?!」
外はもう暗くて、いつの間にか雪が積もっていた。
しんしんと雪が降り、まるで零と出会ったあの日のように視界が悪い。
「零っ!零…っ…!!」
叫んでも、零の返事は聞こえてこなかった。
周りの人は、不思議そうな顔で俺を見る。
そりゃそうだ。
街中で、こんな雪の中、薄着で叫びまくってる奴なんか俺くらいしかいない。
でも、周りの目なんか全く気にならないくらい、俺は必死だった。
「零…っ!」
零を助けた路地裏の前に、レモンのキーホルダーが付いた鍵が落ちていた。
俺の家の、零にあげた合鍵だ。
「落とすなつったのに…、あの馬鹿…っ」
路地裏に入っても、零の姿はなかった。
もっと奥だ。
路地裏を進み、反対側に出る。
初めて来た場所。
雪でいつもと景色は違うんだろうが、大通りよりかなり人気のない静かな道。
少し歩いたところに、人影が見えた。
消えかけの電灯に照らされた、小さな公園。
そこに零は座り込んでいた。
「零!!」
「………檸檬?」
零は顔を上げて、目を丸くした。
また泣いたんだ、目元が赤い。
泣かせるつもりじゃなかった。
傷つけたくなくて…、いや、もしかしたら俺は自分が傷つきたくなくて、零に酷いことをしてしまったのかもしれない。
「焦った……、本当に。」
「ごめん…。だって、檸檬が出て行けって言うから…。」
「違うんだよ。言葉の選択ミスった。うん、出て行かなくていいから。」
「本当…?」
「うん。本当。ごめん、驚かせて…。」
そう伝えると、零はホッとしたように息を吐いた。
「零、俺の気持ち、伝えてもいいか?」
「…………??」
「さっき考えてて、やっと分かったことがあるんだ。」
零は嫌がるかもしれない。
気持ち悪いと軽蔑するかもしれない。
この気持ちを伝えたら、もう元の関係には戻れないかもしれないけれど。
それでも初めて抱くこの気持ちを零に伝えたいと、そう思った。
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