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脅迫状パニック!⑪-3
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おれはバクバクする心臓を抑えながら、頭を振ると何か飲み物を探しに歩き出す。
やっぱりセット内には無いな。
楽屋まで行かないと無いか…。
おれはセットの隙間を通り抜けて楽屋へと行こうとする。
と、トンと誰かにぶつかってしまった。
「あ、すみません……」
「……いえ」
そう言うと、その相手はおれに道を譲る。
おれはその横を通り抜けようとするが、その瞬間強く手を引かれた。
「?!」
おれは一瞬パニックになると、相手を見上げようとする。
その瞬間、口の中にタオルが詰め込まれ、口を塞がれる。
おれは抵抗しようと男を見ると、目の前にキラリと光る刃物が突きつけられる。
「……騒いだら殺す」
おれは情けないことに恐怖とパニックで声を上げることもできず、そのままその男に担ぎ上げられた。
男はおれを抱えたまま足早に裏口からスタジオを出ると、おれをワゴン車の後部座席に押し込める。
おれは、恐怖からなすがままになっているこの状況が悔しくて、車のシートで抵抗を試みようと顔を上げる。
その瞬間目の前に出されたのは一本の注射器。
ーー毒?!
「大丈夫、毒じゃ無いよ。ちょっとだけ気持ち良くなるだけだよ」
ーー麻薬?!
おれはイヤイヤをする様に暴れると、男はおれの腕を取った。
「大丈夫大丈夫。ただのその辺に売ってるお酒だから」
男はそう言うと、手慣れた様子でおれの腕にその注射器を刺す。
プツリと針を刺す痛みが伝わり、おれは身体中を動かす。
「はは。あんまり暴れると、早く効いてきちゃうよ」
男の言う通り、3分もしないうちにおれの身体に変化が現れる。
頭がガンガンと痛み、急激な吐き気がして目の前がぐらぐらと揺れ始めた。
「……っう」
男はおれを後部座席に放り込んだまま、車を運転しはじめる。
意識が朦朧として、何が何だかわからない。
五分ほど走らせて、男は車を止めた。
再びワゴン車の後部座席のドアを開けると、急性アルコール中毒一歩手前でグッタリとするおれをもう一度担ぎ上げる。
おれはそのまま男の部屋らしき場所へ連れてこられると、ベッドに寝かされる。
「ふふ……やっと二人きりになれたね……」
男はおれの猿ぐつわをはずすと、荒い息を繰り返すおれの頬を撫で上げる。
「大丈夫、死にはしないよ。自分の身体でアルコールの量は実験したからね」
男はそう言うと、ハァハァと気持ち悪い息を繰り返す。
なにが大丈夫だ!
おまえとおれとでは体格が違いすぎるだろ!
しかも、アルコール耐性は人によっても全然違う。
まあ、もっとも、アルコールを直接静脈注射された時点で耐性も何もないんだが……。
「今はちょっと気持ち悪いかもしれないけど、大丈夫。すぐに別の意味で気持ちよくしてあげるからね」
何を言っているのか分からない。
おれは身体を動かそうとするが、手足はまったく言うことを聞かない。
かすかに指先が動いたくらいだ。
男はどこで手に入れたのか、革製の拘束具を出してくると、キツくおれの両腕にはめ、ベッドの鉄格子に繋いだ。
「ごめんね、LIN。でも、LINがぼくのこと好きになってくれたら外してあげるからね。そうしたらずっと二人でここに居ようね」
おれはなんとか逃げることができないか、朦朧とする意識の中で周りを見渡す。
男の部屋にはおれの写真集やブロマイド、雑誌の切り抜きなどが所狭しと飾ってあった。
狂気に満ちていると感じたのは、それらの多くに自慰を施したと見られる跡が残っている事だ。
おれは、目に涙が浮かんでくるのを感じる。
なんで、なんで……。
男は笑いながら荒い息を吐き、おもむろにズボンのベルトに手をかける。
ーーまさか。
自分のベルトを外しジッパーを寛げると、既に立ち上がったそれが目の前にそそり立つ。
おれは激しい吐き気に襲われ、目線を逸らした。
男はそのままおれの服に手をかけると、シャツを捲り上げる。
ゾッとした冷気と、寒気がおれの体を襲った。
「はぁ…はぁ…なんて、綺麗な身体なんだ……」
男はおれの身体を弄ると、ニヤニヤしながら下半身に手を伸ばした。
「ーーんーっ!」
おれは精一杯の抵抗を試みるが、身体は動かない。
おれは絶望のどん底に落とされたーーー瞬間。
バン!と玄関ドアが蹴破られる勢いで開けられるた。
おれと男がそちらに視線をやったのと同時に、入ってきた何者かによって男の身体が宙を舞う。
「ーー?!」
「うわああああ!」
鬼気迫る表情で男の身体を投げ飛ばしたのは、なんと敦士だった。
男の身体は、変則的な背負い投げで綺麗に一本が決められる。
男はうぐっとうめくと、後から飛び込んできた清十郎にしっかりと取り押さえられた。
「凛!」
「大丈夫?!」
おれは駆け寄ってきた優と翔太の顔を見て気が緩んだのか、目から涙が流れる。
しかし、声が出ない。
二人はおれの拘束具を外すと、おれの顔を覗き込む。
「何された?!」
「……アルコールを静脈注射されたな……」
一哉は床に転がった注射器とアルコールの瓶を発見し、舌打ちをする。
「え?!それヤバくない?!」
「ヤバいから焦ってるんだろ…」
おれはわずかに頷くと、電話をかける敦士を見る。
どうやら救急車を呼んだらしい。
おれは、それを眺めると遂に限界が来て、そのまま意識を手放した。
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