アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
夏休み(6)
-
side ちとせ
斗真はまだ俺に気がついていない。真顔で女子たちを見下ろしているだけだ
さっさと断れよ、とは思うがあいつが他人を邪険にすることは少ない。現時点で俺を見つけていれば迷わずこちらに来るだろうが、無闇に人を傷つけたり、蔑ろにしたりするわけではない。そういうところが横暴で俺様なのに人が集まってくる理由だろう
とはいえあいつと遊ぶ度にこんなのに遭遇していれば面白くない。斗真がナンパしてくる女たちに興味がないとしても、相手はお構い無しにベタベタ触ったり擦り寄ったりするのだから
いつまで経っても解放されそうにない斗真に痺れを切らしてズカズカと近づいていく。さすがに気がついた斗真が俺を見る。元々興味のなかった女たちなどもう視界にも入らない
「遅い」
イラついた口調も表情も隠すことなくそう言えば斗真はなぜか笑いながら「ごめん」と言う
「なんで笑う」
「何でだろうな?」
女たちの間をすり抜けてこちらに来る
「席どこ?」
「……こっち」
案内しつつふんっと鼻を鳴らして俺は怒っているということをしっかりと態度で示しておく。そうすれば斗真は俺の機嫌を取るために更に周囲など気にすることはなくなると知っているから
「ちとせ、食べ終わったらどこ行く?何か欲しいものとかあるか?」
席につくと斗真を無視してスマホを弄る。その様子を暫く眺めていた斗真が口を開いた
「…別にない」
顔も上げずにそう言えば
「じゃあ帰る?」
と聞かれ顔を上げる。ギロリと睨みつけるが頬杖をついた斗真は片手で番号札を弄りそれを眺めるだけでこちらを見ない
わかっていてやっているのだろう。その番号札に視線をやることなくひたすら斗真を睨んでいるとやっとこちらに視線を向けた斗真がニヤリと笑う
「うちくる?」
「………」
何も答えない俺に斗真はそれ以上何も言わなかった
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 43