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夏休み(8)
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side ちとせ
「で、どこか行くのか?」
マックを出た後、特に何も無い駅だったためまた電車に乗り、来た方向へと戻る。家へ帰るなら次の駅で乗り換えなければならないというところで斗真が声をかけてくる
しかし行きたいところがあるわけでも、欲しいものがあるわけでもない。ただ何となくこのまま帰るのは嫌だと思った
あの日を境にお互い色々と吹っ切れたと思う。斗真は俺に対する負い目や不安、俺は斗真に対する自身の気持ちと向き合えた。言葉にしてやっと納得できた感情もあったし、互いが相手の気持ちを考えることが出来た。ずっとあのまま無理やりだとか、仕方なくだとか、そんな思いでいたならきっとどちらかが先に潰れていた。それは斗真だったかもしれないし、俺だったかもしれない。どちらもが何かしら苦しんでいたのだと思う。ほんとはまだ言いたいけれど言えていないこともあるが、それでも以前よりは関係が良くなってきていると思っている
そんなことを考えていると扉が閉まって電車が出た。窓から見えるホームの看板には俺の乗り換える駅の名が書かれていて、あ…と思ったがどこかほっとしたりもした
聞かれたことに何も答えずにいたわけだが、隣に座る斗真を見ると特に気にした様子もなくむしろ降りる気がないのをわかっていたようだ
結局よく行く学校の隣駅にあるショッピングモールでぶらぶらとウインドウショッピングをした。17時半頃にそろそろ帰るかと駅に向かったがそれぞれ家に帰るなら逆方向となる
「じゃあな、気をつけて帰れよ」
なんて言おうか思い悩んでいる内に駅に着いて改札をくぐれば斗真はあっさりと別れの挨拶をして背を向ける。余りにも予想外で俺はぽかんとその場に立ち尽くした
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