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そっと包んで、奥に仕舞って
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side ちとせ
瞼が腫れぼったくなって、僅かに頭痛がしてくるほどに泣いて、泣いて、泣いた。
見下ろすとぐっしょりと濡れて一部だけ色の濃くなったシーツがある
「洗濯、しなきゃ…」
掠れて鼻にかかったような声が出た
「斗真に会ってから、泣いてばかりだな」
ふっと自嘲するように笑う
とっくに日は暮れていて部屋は暗くなっていた。ゴミ箱を蹴飛ばしながら電気のスイッチを押しに行く
シーツを剥がして洗濯機に放り込んで顔を洗う。
部屋に戻ってひっくり返したゴミを拾う。
空っぽの冷蔵庫を開けて今度は冷凍庫を開ける。
見つけた冷凍パスタをチンして食べる。
風呂に入って髪を乾かす。
そして、ベッドに戻ってきて息を吐く
全部終わって、そっと胸に手を当てるとトクトクと心臓が鳴っていた。さっきまで刺すように痛くて、握り潰すように苦しかったのに、何でもなかったみたいに動いていた
当たり前だ。そんなことで心臓が止まっていたら毎日どれだけの人が心臓麻痺で死ぬ事か。
「あーあ…」
意味もなく呟く
「斗真…」
なんとなく呼んでみる
「好きだ」
きゅっと痛んだ
痛みが俺を戒めているようだった
それと同時に教えてくれてる
『斗真が好き』
でも言えないから…
言ったら終わってしまうから…
だから胸の奥の奥にそっと包んで仕舞っておこう
だけど時々出してきて、そっと覗いて、ちょっとつついて、眺めて愛でて慈しもう
「とーま…」
その日はなぜか久しぶりに穏やかに眠れた
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