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大輝
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ぐいーっと伸びをするほんとにでかい男、一年のワカメくんとおんなじぐらいでかいんじゃないの?こんなでかい人の横に庄司くんが並んだら…ちょっとギャグかも。
名前が思い出せないから、失礼を承知で「あの、」っと声をかけようとすると、でかい人に「なあ!」と、逆に声をかけられた。
「ごめん、名前教えて!」
「ぶはッ!それ、今俺もおんなじこと聞こうと思ってました。俺は方角の西に、浦島太郎の浦、そんで恋愛の恋って書いて西浦恋っていいます~ちなみに二年っす、どーぞよろしく」
「恋って書いてレン?すっげ~ロマンチックな名前!俺は宮崎大輝、大きく輝くでダイキな、ってか二年だからって別に敬語じゃなくていいから!俺そんなの気にしねーし!大輝って呼んで?」
「まじー?よかった、俺結構敬語って苦手でさあ、大輝ってでけーし迫力あるし、慣れ慣れしいの嫌かと思って遠慮したじゃん!俺のことも恋でいいから!」
「れーんー!なんだお前~喋りやすいなー!で、で?二年生がタバコなんて吸っちゃっていいのかな~?」
大輝って名乗ったその人は、カッコいいツラをだらしなくニヤニヤとさせて俺のタバコの箱を指差してくる。俺は視線を宙に浮かべてシラでも切ろうかと思ったんだけど、そのニヤニヤ顔がどこか庄司くんに似てて、あ、これ、歳上特有のイジリだと気づく。
「タバコもいいけど、ため息吸っとけって!」
「ふがッ…!!ちょ、なにすんだよー!」
「これ、恋がさっき吐いたため息。吸っとけ吸っとけ、いいことありそうじゃね?」
この人、天真爛漫だけどなんかぶっ飛んでる、面白いな、気合うのかも。学年はひとつ上、もうすぐ卒業しちゃうなんて、もっと早く知り合っていたらよかったな~なんて。
卒業、卒業、卒業なあ…。庄司くんも、もう決めてんだよな、卒業後の自分。俺たちはこれから一年かけて決めなくちゃいけないわけで、んで、進路のために頑張んなきゃなんないわけで。えーっとだから、いつまでものらりくらりしてらんないんだよなってこと。現実ってのは甘くない。特殊な夢を持つならそれ相応の覚悟を。俺の選ぶこの道は、もしかしたら行き止まりかもしんないし、もしかしたら崖あっもしんないし。あーあー、この先も未来に、愛を連れて行く勇気なんてねえんだけどな、俺には。
「大輝はさー、卒業したらどうすんの?」
「んー、決まってねーなー。でも、一緒にいたいやつは居る。」
真っ直ぐな目が、キラキラして見えた。その「一緒にいたいやつ」というのがどうにも宮崎大輝という男にとっては特別らしい。特別、かあ。俺にとっての愛はなんですか。幼馴染で恋人で特別で大好き、キスもセックスもばっちりキメて、親にまで公認の仲だってのに。俺は贅沢なのかな、なんでこう、もやもやして満たされないんだろう。愛がくれる愛が重い、とか、そんなんじゃなくってもっとこう、…好きだから、これ以上の干渉は、依存は、危険なんじゃねえかなって思うんだけど。
「なあ、卒業ライブくる?」
「卒業ライブ?なに?恋バンドしてんの?!」
「え?!すっげえ今更だな!庄司くんの話してんだから気づけよ!庄司くんと同じバンドなんですケド、俺!」
「まーじか!ん~、ま、庄司の痴態拝みに行くのもいいな」
「ばーか、すっげえかっけーよ、うちの庄司くんは!絶対来て、ライブ。あんたのハート奪っちゃうから!」
「それ、おんなじことあのチビに言われたことあるなー」
「なんせおんなじバンドメンバーですからネ!」
今は、まだ未来のことはいいや。取り敢えずは、目先の卒業ライブが先だ。
庄司くんのありがとうを込めてサプライズして、んで、その後決めよう。俺が、どうするか、愛が、どうするか。
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