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(なんか、、人が出払ってるぽいな。)
救急の中を覗くと中は閑散としておりとても静かだった。
やはり忙しいのであろう。
中のホワイトボードには今日の外班と書かれた欄に数人のマグネットが貼ってある。
(そういえばさっきヘリが飛んでったような、、なんかあったんだな。)
そう思いながら扉の前で悶々としていると、
「ありゃ?ケイちゃんじゃん!久しぶり~。
どったん?確か今日から復帰だろ??」
知らない方に声をかけられる。
俺と同じくらいの身長をしているセンター分けの人だった。
(俺の事知ってるのか?!いや、今はそれより、、)
「、、!あの、、失礼ですが日奈瀬先生か社先生はいらっしゃいますか?先日の未受診妊婦のことで聞きたいことがありまして、、」
するとその人はおやっ、という顔をして
「ありゃりゃ、もしかして僕のこと覚えてないか!
まぁ、いいや。それよりコノハかチハかぁ、、、
ちょいまちね」
この人も俺の知り合いだったらしい。
忘れてしまったことに心苦しくなる。
「すいません、、俺本当に色々な人を忘れてしまってるらしくて、、」
「いーよ、いーよ。関係はまた築いていけばいいんだから!ちなみに名前は飴谷(アメヤ)ツバメね。お前とは結構長い付き合いなのよ、これが」
ニカッと笑いながらそう言い残し飴谷さんは奥へと引っ込んで行った。
(ほんっとやばいな、、はぁ、俺どんだけ忘れてんだよ)
軽く自己嫌悪に陥る。
早くちゃんと思い出したい、、五か月前俺には何があったんだろうか。
「おまたせ~。ごめんなぁ今コノもチハも外来行っちゃってるみたい。どうする?もし時間あればここで待ってるか?」
もうちょいで帰ってくるっぽいから、と言われ少し迷う。
部外者の俺が救急に居座っていいのかとも考える、がやはり金糸さんのことを詳しく聞きたいという気持ちが勝った。
「すみません、、少しお待ちさせてもらってもいいですか?
お邪魔にならないところにいるので、、」
「おけおけ〜!んじゃ入りな。
マコーーー!!コノとチハにお客さんさん!お茶だしてあげてーー!」
局内に響き渡る声で中の人が呼ばれる。
この人の声は何処か落ち着く。
やはり忘れているだけでなかなかに親しい関係だったのだろう。
「ツバメ先生聞こえてますから、、って」
奥からのっそりと顔を出したのは先程食堂で日奈瀬さんと一緒にいた大型犬のような医師だった。
そいつはこちらを見て目を丸くしたかと思うとまた奥へと引っ込んで行った。
「あいつは榊 マコト。お前と同期だったやつだよ。
覚えてないかな?」
「すみません、、」
「はいはい、そうやってすぐ謝んなぁ!いいんだよまた友達になりゃ!!」
飴谷さんはそういい俺の肩をバシバシ叩く。
そういえば今日はたくさんすみませんと言っていた気がする。
「、、ツバメ先生力加減考えてあげてくださいよ。あんたまあまあ力強いんですから。」
そう言いながら榊さんが奥からお茶を持ってくる。
(、、っえ?この香りは、、)
「このお茶、、、」
すると飴谷さんはぱちくりと目を瞬かせ俺の方を見つめる。
「ケイちゃん、このお茶知ってんの?」
「はい。以前社さんのところで頂いたやつに似てるような、、、」
あぁ、そういう事か、と飴谷さんは納得したように手を叩く。
このお茶に何かあるのだろうか、、
「このお茶はひな先生が配合しているものです。
でも社先生のところのものとは少し違いますね。
あちらは金木犀ですがこっちのは銀木犀の配合が多くなっているんです。」
座りながら榊さんが教えてくれる。
確かに社さんのところのより爽やかな香りがする。
「へぇ、、そうなんですね、、。日奈瀬さんはこういうことがお得意なんですか?」
「コノはこういうこと好きなんだよ。
自分好みに作った方が美味しくなるから~って、、
というかマコト~!?なんだその仏頂面は!!もっと笑えよ!!」
終始真顔で話していた榊さんにちょっかいをだす。
仲がいいのだろう。
「オレは元々こういう顔です。ツバメ先生こそもっとしゃんとしてください」
「なんだとぉ!?こらこのクソ後輩生意気だぞ!!」
「ちょっ、、髪をぐちゃぐちゃしないでください!!」
やめてくださいよ、と言いながらじゃれ合う二人に自然と笑みが溢れ出す。
「、、ふははっ、、、って、あっ」
つい笑ってしまうと二人の視線がこちらへと傾く。
「あっ、、、すみません。
その、、つい、、、あの、、二人は仲がいいんですね。」
しどろもどろになってしまう。
二人の顔が見れず、下を向いて伏せる形になってしまった。
(やっちゃった、、、ヤバいやつだよな。)
しばしの無言の時間が続き、どうしようもなく気まずくなり恐る恐る顔をあげると、、
「「っあはは、、」」
二人は顔を見合わせて笑っていた。
「気にすんな、気にすんな。だいたいお前は覚えてないけど、お前もこうやって一緒に馬鹿やってたんだよ!」
「そうそう、こんなこと日常茶飯事でしたしね。」
飴谷さんも榊さんもにこやかに呟く。
そうか、二人とも以前の俺を知っているのか。
「あの、、以前の俺ってこんな風だったんですか?」
すると榊さんがお茶を飲みながら朗らかにいう。
その表情はさっきとは違い何処か懐かしい色に染っていた。
「そうだよ。オレたちとコノハ先輩、チハ先輩あとシュンタ先輩も来てたりしたな、、、
、、あと敬語じゃなくていい。名前もマコトって呼んで。」
ね、ケイ?とこちらを伺うように尋ねてくる。
「!、、あぁ!」
(よかった、仲良くなれそうだ、、、
いや、"また"仲良くなれるんだな。)
以前のことを俺は覚えていない。
だが過去を振り返りすぎるのはきっと良くない。
これからの未来をまた作っていけばいい。
その過程で思い出すことが出来ればそれで万々歳だ。
「、、いーじゃんいーじゃん!!なんか前に戻ったみたいだな。」
二ヒヒ、と笑い飴谷さんも
「僕も下の名前で呼んでよ!!ほら僕の下の名前は?」
「ツバメさん、、ですか?」
「!!そーそー!!これからはツバメさんね!」
そうしてしばらく話していると、局の扉がパタンと開いた。
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