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「っあ!!ケーーイ!!こっちだぞー!!」
職員用駐車場の目の行きやすいところに先輩は立っていた。緑色の車は最後に記憶にある先輩の車と異なっている。きっと変えたのだろう。
「すみません、お待たせしてしまって、、」
「気にすんな!!わけは中で聞くから、早く乗った、乗った!!」
そういうと俺を車の中に押し込んでくる。
俺は助手席に乗り込み、先輩はそれを見届けると運転席へと回った。
「んじゃ、いこっか!!ここから三十分くらいだな!信号に捕まらなきゃ!!」
「結構あるんですね、毎日大変じゃないですか」
「そんなことないぞ!前住んでたとこの方がちょっと来にくかったからな!」
そんじゃあ、しゅっぱーつ、と先輩はハンドルに手をかける。
そこで俺は重要なことを思い出す。
「先輩!!車だけは安全運転で!!お願いします!」
「分かってるってーー!!」
(いや、、あんた前科あるじゃないですか、、
俺あの車椅子で爆走されたこと忘れないですからね、、、)
そんな恨み言を心の中で呟いて先輩の安全運転を願った。
こんなところで永遠の眠りにつくのはごめんだ。
「!そうだ、ケイの荷物は先に来てたから玄関に置いといたぞ!!着いたら部屋案内するからついでに持ってってなぁ!!」
信号待ちをしている時に先輩がいう。
ちなみにもう二個目の信号に捕まっていることから今日はかなり運が悪いらしい。
「ありがとうございます。なんか、、すみません色々してもらっちゃって、、」
「ほーーら!ケイ!!その、ごめんなさいはだめだぞ!!こーいう時はありがとうだけでいいの!」
先輩は軽く肩をどついてにっこり笑う。
そのまま前を向いて運転を再開した。
「そんで、なんでこんなに遅れたの?今日は早めに上がらせてもらえるはずだっただろ?」
先輩が上機嫌に尋ねてくる。
俺は隠してても仕方ないと思い全てを包み隠さず話すことにした。
「実は、帰りに少しだけ救命に顔を出してきたんです。
十一月からのことも相談しようと思って、、」
すると先輩が不思議そうに問うてくる。
「十一月のこと、ってなんだ??なんか救命でやるのか??」
そこで俺は先輩に救命に行こうと決心したことを言っていないと思い出した。
「十一月から救命と産婦人科の掛け持ちをしようと思っているんです。俺もダブルボード目指したいなと思って、、少しでも多くの人を救いたいから、、」
先輩は少し黙った後にそっか、と優しく呟いた。
「ケイが決めたんならいいじゃん!れでも決めたからには逃げ出すなよ。」
(、、やっぱりこの人は変なところで威圧感があるんだよな、、、)
今の声色には『たとえどれだけ辛いことがあろうとも逃げ出すことは許さない。』という先輩からの厳しい思いがこもっている、いつもより少しだけ硬い声だった。
「当たり前です。それぐらい覚悟の上でやろうって決めたんですから」
「そだね、それにケイなら心配いらないや!!」
そういうと俺を見てくる
そのまま俺は続きを話すことにした。
「それで救命に行ったんですけどちょうど誰もいなくって、、帰ろうかなって思ったところに日奈瀬さんがいらっしゃったんです。」
「たしかヒナ今日は外に出てたんだった。じゃあそこに出くわしたんだな!!」
先輩は納得したようにいう。しかし俺には、そのような雰囲気には見えなかった。
「いえ、、俺が見た時は病棟を回診したあとな気が、、
まぁ、それはいいんですがその時に日奈瀬さんに花房さんのところに行かないかって言われて、、」
「花房さんって、、三日前の夫婦か!!目を覚ましたんだな!そっか、良かった、、」
「はい、それで三日前のことを説明するために二人でICUに向かったんです。そこで、、色々ありまして、、」
すると先輩はあぁ、とため息混じりに呟く。
「なんとなくわかったぞ、、大方お子さんのことでなんかあったんだろ。」
「ご名答です。その、、日奈瀬さんがお子さんのことを説明されてそれに父親の方が取り乱してしまって、、」
先輩はあちゃー、と言わんばかりに額を抑える。
そして少し呆れたように口にする。
「はぁ、、あのバカコノハ、、ちょっと考えたらわかるだろ、、どうせ投げ飛ばされたあたりか、、、
あいつよくあるんだよ、投げ飛ばされんの、、」
(いや、よくあんのかよ、、)
そういえば飛ばされた時に受身が取れていた気がする。
あれはただ単に慣れていたんだと気づく。
「まあ、そのあとは何とか落ち着いてもらって、、
花房さんはまた後日担当医の方から説明があるそうです」
「なんというか、、やるせないよなぁ、、
目を覚ましたら愛息子がいなくなってるんだから、、」
先輩が少し遠くを見つめながら口にする。
本当にそうとしか言いようがない。
「そうですね、、何を言ったらいいのか、、」
「まっ、これを糧にもっとたくさんの人を助けよう。
それがオレたちにできるだったひとつの償いで次に繋ぐことが出来ることだからな!!」
先輩はそういうとスピードを若干あげて帰り道を急ぐ。
もうすぐ着くそうだ。
「はい、とーちゃく!!ここが今日からケイの暮らすとこ!!」
「、、いや、、めちゃくちゃでっかいですね、、」
目の前に現れたのはいわゆる高層マンションに相当するような建物だった。
かなり見上げる形になる。
「部屋は三十六階な!!はいこれ、合鍵!!無くすなよ!!」
そういうと俺にカードキーを手渡す。
そうか、今どきのマンションはカードキーを使うのか、、
「てか、、俺こんなとこにいていいんですか、、
なんか場違いなような、、、」
「あはは、何言ってんだよ!!今日からここでくらすんだぞ!!遠慮すんな!!」
そう言って俺の手をつかみズンズンと中へ進んでいく。
自動ドアをくぐるとエントランスはびっくりするほど広かった。
ラウンジなども設備されているらしい。もうマンションというよりホテルのようだ。
「エレベーターはどっちからでも行けるけど右の方が高層階に止まるからそっちの方がいいぞ!」
さっきのエントランスからエスカレーターで一階分上がるとロビーへと出た。カウンターにはホテルマンのような装いのスタッフが待機をしている。
(ほんとに、、ここに住むのか、、
なんか息が詰まりそうだ、、、)
そんなことを思っているとエスカレーターが到着し、俺と先輩は中に乗り込む。
内装は中世ヨーロッパのような少し古風なデザインだった
そうしてエスカレーターで上に登ること、数分。
ようやくベルがなり目的階への到着を知らせる。
「よっし!部屋は3605、あの角部屋な!!」
床には絨毯が敷いてある。そのおかげで歩き心地がとてもいい。
この階に四部屋しかないらしい。
「ここが今日からケイが暮らす部屋だぞ!!
いざ、オープン!!」
そう言い先輩はドアを開ける。
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