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『コノハさん、明日は遅くなりそうですか?』
なんだろう。懐かしい声が頭を横切る。
『って、、もう寝かけてるし、、ほら!起きてください!!医者がこんなとこで寝て体痛めたら患者さんに笑われますよ』
そんなことを言いながらも優しくおれの体へと手を回す。
微睡みを抱えそのままゆっくりと抱き上げらるほんのりとした浮遊感へと身を委ねる。
(あ、、この香り、、ふふっ)
自分よりもずっと暖かなその体に寄り添って何となく顔を埋めてみると大好きな甘い花の香りがすっと入ってきた。
『、、起きてるんじゃないですか、、ほんとに甘えたがりなんですから、、』
そう言うやいなや深く口を付けられる。暖かな陽だまりの中たった2人だけの箱庭。
(あぁ、ずっとこの時間が、、、)
続けばいいのに、、、
そんなことを思っていると意識がゆらゆらと覚醒する。
夢の中はあんなにも暖かかったのにいざ起きてみると冬の足跡が響く肌寒さだけが残っていた。
(あー、、、、また寝ちゃってたのか、、てか今何時だろ、、)
冷たい床で眠っていたせいだろうか、腰が痛い。軽く伸びをするとあちこちからポキポキと関節が悲鳴をあげる。
(いっ、たぁ、、はぁ、、)
「もう若くないんだよな、、体を大事にしなきゃな、、」
ただでさえ普段から周りに、、
『お前はほんっっっっとに不摂生、不健康おまけに不用心だな!!はぁ、、それでも医者かよ、、、』
と、散々の言われようである。
「まぁ、確かにちょっと体は弱いけど言うほどか??」
試しにむきっと力こぶをつくってみる。しかし目に映ったのは申し訳程度に膨らんだ己の貧相な腕だった。
その情けなさに下唇を噛んでしまう。
(現役の頃はもうちょいあったよな、、衰えてるかぁ、、)
ふと学園での日々が頭をぐるぐると回る。忙しかったし、何かといつも追われていたが充実していた日々だった。それに隣にはいつも大好きな彼の姿があった。
(ケイなんか思い出したのかな、、CTもMRIも以上はないって出てたしやっぱり心因性だよな、、だったら、、、)
そんなことを思っているとずんと心が落ちてゆく。自然と顔を埋めて取り留めのないことが浮かんでは消えてを繰り返す。
(あれからもう二ヶ月?そっか、、そんなに経つのか、、結局あの事故での被害は想定より大きくなって、、おれたちもずっと事故処理に追われて、、正直ここまで考える暇も与えられなかったもんな、、)
でも実際にはその時間がおれにはありがたかった。何も考えなくていい。そうすればたんたんと日々がすぎていくだけだ。おれの中では患者さんのこと、そしてずっと眠っていた彼だけが心を支配していた。
そんなことをぼーっとしながら考えていると微かに聞こえる音を拾った。この時間は回診等で忙しいから医局に来れる人なんていないはずだ。そう思いもう一度耳をすませてみると確かに戸を叩く音が聞こえた。
「!!」
(誰か来てくれた!ようやく出れるのか!?)
ここに閉じ込められてはや一時間を過ぎようとしていたところにやっと助けが来てくれたようだ。急いで扉に駆け寄って内側からどんどんと音を出す。
「だれか!!そこの人!ここを開けてください!!!」
防音になっているから声は聞こえないかもしれないがせめて音だけでもと思い必死で戸を叩く。懸命に声をあげているとパタパタとこちらに駆け寄ってくる足音が聞こえた。
「!そこに誰かいるんですか!?」
先程よりもより一層の激しく戸をバシバシと叩く。もはや手が赤くなるなど考えている暇はない。兎に角早くここから出してもらわなければ。
そう思い今日一番の力で扉をたたくと、、
「!!ふぎゃっ!?」
「うわっ!?」
さすがは翔欧。至るところが老朽化しているのはこの扉も例外ではなかったらしい。おれの渾身の一撃を受けてあっさりと開いた。しかしそんなこと予想しているはずもなくおれはそのまま勢いを殺せる扉の前にいたその人に倒れ込む。
こんなことを予期していなかったのは相手も同じだったらしく咄嗟におれに手を回してくれたものの一緒に倒れ込んだ。
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