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孤独な一週間
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背中の熱は少しずつ着実に増していく
先輩が身震いする回数も増えた
抑制剤の効力が完全になくなるのも時間の問題だった
恭二郎「この道はどっちに曲がりますか?」
陸「ん…」
先輩の指差す方へ歩みを進める
かれこれ10分ほど歩いているが未だ到着しない
この道を一人で帰るつもりでいたとは、本当にこの人は阿呆か。抑制剤を過信したな
相変わらず荒い呼吸を繰り返す先輩の方へ視線をやる
視界に先輩の焦げ茶色の前髪が映った
ぐらりと脳みそが揺れる感覚
少し気を抜くとこれだ
ぐっと眉間にシワを寄せ、集中集中、と自らに言い聞かせ次の一歩を踏みしめる
陸「ん……ここ…」
先輩の声に足を止めると、そこには立派な一軒家が立っていた
車二台が止められそうな駐車場に車はない
背中の先輩はぐったりと力の抜けたまま動かないので、仕方なく先輩を担いだまま家の門を開き玄関へ進んだ
恭二郎「鍵ありますか?」
玄関の前に立ち先輩へ問いかける
先輩はごそごそと自らのポケットを漁り、鍵を取り出した
その鍵を受け取り玄関を開くと、白い壁のシンプルな内装が目に飛び込んだ
ヒノキの優しい香りに包まれる
恭二郎「先輩、降ろしますよ」
慎重に背中から先輩を降ろし玄関の床に座らせた
背中越し、見えなかった顔
耳まで赤く上気したように染まり、目は一点を見つめてうつらうつらと揺れていた
陸「……………虎岩」
恭二郎「は…はい」
陸「ありがとな」
熱い吐息と共に、ゆっくりと紡がれた言葉
陸「まじ…で、助か、た…」
俺の目を真っ直ぐに見つめるその弱々しい瞳
吸い込まれるように目が離せない
俺の心臓はドクドクと激しく鳴っていた
嗅覚、視覚、全てを支配されたようだった
触りたい
触りたい
触りたい
陸「今度、焼肉弁当奢るから…あ、お前はチョコのがいいんかな」
ふにゃっと笑う顔
本能にのまれかけた俺を引き戻したその笑顔に胸の奥が掴まれたように少し苦しくなった
恭二郎「もう、変な時に外出とかしないで下さいよ」
先輩から視線を外して部活の鞄を担ぎ直す
手に持っていたトートバッグを先輩に差し出した
恭二郎「これ」
陸「サンキュ」
指先が触れ合う
先輩の中指がほんのわずかピクリと反応した
恭二郎「それじゃ…」
そのまま先輩の目を見ることなく、俺は玄関の扉を開く
鼻先をかすめる雨の匂い
ゆっくりと閉まってゆく扉の隙間から、先輩が立ち上がる気配を感じた
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