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各国壁ドン事情 白の国編2
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神官が素直にそれを訊ねてみれば、実はですね、と王が答える。
「ここ最近の報告に、壁ドンという言葉が頻出していまして」
「壁ドン、ですか?」
「ええ。それは一体、何なのでしょうかと……」
考え込む素振りを見せた王に、神官は笑いかけた。壁ドンの正体ならば、自分が知っている。
「壁ドンとは、最近流行りの動作ですよ、大司祭様」
「流行りの動作?」
「はい。リィンスタット王国から大陸全体に広まった本の物語に出てくる動作でして、男性が、こう、女性に対して格好良く迫るものです」
「ああ、成程」
神官が一人で壁ドンの真似事をして見せると、王はありがとうございますと微笑んだ。滅相もございません、と恐縮しつつ、神官も微笑み返す。
しかし、納得した様子の王は、すぐにまた不思議そうな顔をする。
「ですが、それでは何故、報告書にその動作が頻出するのでしょうか」
「……確かに、そうですね。通常であれば、壁ドンは報告書に記載されるような代物ではないと思うのですが……」
「ええ、私もそう思うのですが、こちらを見てください」
そう言って王が机の上に書類を何枚か並べた。神官が近づいて確認すると、確かに所々に壁ドンの文字が見て取れる。
意味が判らず、神官は思わず眉をひそめた。壁ドンと事故、という二つが上手く結びつかなかったのだ。
「どれも殆ど同時期の報告です。こちらはグランデル、こちらはミゼルティア、こちらはカスィーミレウで、こちらはリィンスタット、そしてこちらはネオネグニオですね。……リィンスタットに関しては、どうやらいつものように王獣の雷を浴びたリィンスタット王の治療、とのことですので、何が起きたかは壁ドンの説明でなんとなく把握しましたが……」
大方、執務をさぼって女性に壁ドンをしていたところ、怒れる王獣に罰を与えられたのだろう。そこだけは、神官も容易に察することができた。だが、ではその他の国は、となると、これは確かに神官にも理解できない。
そこで神官は、許可を得て件の報告書を手に取り、しっかりと目を通してみた。いずれも各国の王宮に派遣されている回復魔法師からの報告書である。
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